大谷翔平が今季MVPを受賞すればDH専任選手として史上初、歴代2位タイの3度目に 現地記者の評価は? (3ページ目)
【ルースは当時の規則でMVPは1回だけ】
筆者は、大谷が初めてア・リーグMVPを獲得した投票に参加したほとんどの記者に話を聞いたが、タイガース担当のクリス・マッコースキー記者は、「大谷が毎年二刀流で活躍したら、MVP投票者は今後判断が難しくなる。というのは今回2位のウラジーミル・ゲレロは投手ができないという理由で、MVPに手が届かなかったが、来季以降も大谷が同じような活躍をした時、再びMVPに相応しい野手が、同じ理由でまた賞を逃していいかどうか悩むからだ」と話していた。だが、それはジャッジのMVP獲得で分かるように杞憂だった。
ちなみにMVPの歴史を紐解くと、1910年、チャルマーズ自動車がリーグの首位打者に自動車を贈ったのがMVP誕生のきっかけだったと言われている。日本のプロ野球でもそうだったが、プロ野球の黎明期は、打率こそが打者を評価するベストの指標で、打撃王として称えられた。それを変えたのが本塁打王のルースだが、ルースの全盛期だった1920年代のア・リーグでは一度MVPに選ばれると、翌年から対象外になるという規則があり、1923年に打率.393、41本塁打、133打点で選ばれたルースは、以後は対象外。現行のルールになったのは1931年からで、ルースの全盛期は終わっていた。結果ルースのMVP獲得は1度だけである。
これまで史上最多のMVP受賞者はバリー・ボンズで7度。大谷が今年獲得すれば3度目で、歴代2位となり、10人の偉大な先人に並ぶ。ジョー・ディマジオ、ミッキー・マントル、スタン・ミュージアル、近年ではアレックス・ロドリゲス、アルバート・プホルス、マイク・トラウトなどである。
おそらく今後の大谷は、これからもこの最高の賞に絡み続けるのだろう。やはりタイガース担当のエバン・ウッドベリー記者は「大谷は二刀流で有利だから毎年MVPを獲ると言う人がいる。もしそれが本当なら、彼は野球史上最高のプレーヤーになり、ゆくゆくは、MVPは『大谷賞』と改名されるだろう」と予測していた。2021年の時点では彼の話を軽く聞き流したが、今だとヒザを乗り出して聞いてしまうのである。
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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