レッドソックス傘下で苦しむ上沢直之 30歳で新たに挑戦するフォーム修正に「自分を信じてやるしかない」 (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

【フォーム修正の効果】

 上沢本人の説明によると、自身では投球時に左足を真っ直ぐ踏み出しているつもりが、自然とインステップ気味になっていたのが気になっていたという。そうなると投球時に身体が右側に流れ、速球が力を失う。それを矯正するためにフォーム修正を行ない、22日が初の実戦だった。

「かかと寄りに少し重心をかけ、アウトステップ気味で投球することによって、上から縦に投げる感じにしたんです。そう投げたら、前よりも真っ直ぐで空振りが取れる。スピードはいつもより1マイルくらい速かったです」

 実際に、この日の上沢の直球は最速93マイル(約150キロ)を記録するなど、苦心するなかでも一定の手応えは得たようだった。こうして修正に取り組んだ背景には、マイナーとメジャーを行き来するうちに「速球の大切さ」を感じたからだ。

「ストライクゾーンでファウルを打たせたり、カウントを取ったりしなければいけない。そのためには真っ直ぐをよくしておかないと。いかにボール球を振らせるかなんですけど、こっちでは(速球に力がないと)ボール球で空振りさせるのが難しい。最近はずっと『(首脳陣から)変化球の練習をしてくれ』と言われていたんですが、あらためてもう一回、真っ直ぐをやったほうがいいのかなと感じました」

 速球に磨きをかけることによって、スプリット、カーブ、スライダーといったほかの変化球が生きてくる。フォーム修正によってそれができれば、投球の幅は確実に広がる。

 その理屈はもちろん理解できるが、難しいのは、上沢がすでに一度メジャーに上がり、今でも再昇格に近い位置にいることだ。

 メジャー候補生がひしめく場所で新しいことに取り組み、また適応期間が必要になれば、昇格が遅れることになりかねない。上沢自身も結果を求めつつ、同時に向上を目指していくことの難しさを素直に認めていた。

「難しさはありますね。ここで結果が出ないと絶対にメジャーに上がれないので、結果を求めたいのはすごくある。でも、一番いい状態で勝負できるようになるのは絶対にいいこと。そこの狭間で揺れている感じですね。いい方向に進んでくれないとただの失敗で終わってしまう。いい方向に転がってくれるように、自分を信じてやるしかないという感じです」

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