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大谷翔平の対戦投手を徹底分析 三十路先発陣のカージナルス、因縁のジャイアンツ、今永昇太らカブス先発陣とは初対決 (4ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki
  • アフロ●写真 photo by USA TODAY Sports/Reuters/AFLO

【カブスは先発3人が初対戦。大谷の苦手がブルペンに】

評価がうなぎ上りの今永昇太。対大谷はいかに?評価がうなぎ上りの今永昇太。対大谷はいかに?この記事に関連する写真を見る

 このシリーズの後、ドジャースはロサンゼルスを離れ遠征。4月5日から7日はシカゴでカブスと3連戦だ。予定されているローテーションどおりなら、第1戦はローテーション2番手のカイル・ヘンドリックス(34歳)、第2戦は左腕のジョーダン・ウィックス(24歳)、第3戦は今永昇太(30歳)との対決になる。3人とも大谷がメジャーで一度も当たったことがない投手だ。

 ヘンドリックスは速球の平均速度が87マイル(139km)と、メジャーで最も遅い先発投手。全投球の41.1%を占めるのは平均81マイル(130km)のチェンジアップで、被打率は.180だ。遅い直球とさらに遅いチェンジアップで緩急をつけ、抜群のコントロールでバットの芯を外す。速い球に強い大谷だが、果たしてこの遅い球を打てるのか? ドジャースとは過去6試合対戦、防御率5.03で3勝3敗と、フレディ・フリーマン、マックス・マンシーによく打たれている。

 ウィックスは2021年のドラフト1巡指名左腕。昨季途中にメジャーデビューを果たし7試合に先発、4勝1敗だった。チェンジアップとフォーシームを軸に投げる。カブスは近年ドラフトと育成がうまくいっており、開幕投手でエースのジャスティン・スティール(28歳)は2014年のドラフト5巡、5番手のハビエル・アサド(26歳)はメキシコ出身でともに生え抜きだ。投手育成に多大な貢献をしているのはトミー・ホットビー投手コーチで、テクノロジーやデータ分析に詳しく、ピッチデザインのアドバイスが得意だ。今現在も、今永の球種をメジャー仕様に進化させるべく、本人と共同作業に当たっている。

 今永は3月14日のアスレチックス戦、キレのいい直球でメジャーリーガーを圧倒した。キャンプ中、ブルペンで意識して高めに投げる練習に取り組んだ。日本では見逃されボールになるだけだったが、メジャーでは打者が積極的に振ってくる。

 イアン・ゴームズ捕手は「高めの直球は伸びがあるし空振りが取れる。天賦の才能。もっと使えばいい」と励ます。その上でホットビー投手コーチは直球がシュート回転ではなく、むしろカット気味に伸びて行く方が、メジャーでは有効になるとアドバイスを加える。

 今永自身は「日本の時に投げていた真っすぐは別物として考えていきたい。こっちの野球の特徴と自分がうまくフィットしていかないといけないので」と言う。試合途中からはチェンジアップの空振りが増え、9奪三振だった。「真っすぐでしっかり差し込んでいけば、バッターが真っすぐを狙ってポイントを前にしてくれるんで、少々ボール気味のチェンジアップでも振ってくれたりとか、高めを振ってくれたりする。相手のポイントをいかに前に出すか、それが僕の生命線になると思っています」と説明する。

 クレイグ・カウンセル監督は「何も変える必要はない。素晴らしい」とご満悦だ。もっともこれで大谷を抑えられるかどうかはわからない。メジャー6年間で大谷は対左投手の成績も上げ、高めの直球も長打にする。2023年の成績は、左投手の直球に対して打率.296、長打率.630だった。一方チェンジアップなどオフスピード系は打率.273、長打率.455、スライダーなどブレキングボール系は打率.203、長打率.500だった。左投手から打った本塁打は44本中11本だった。

 ところでカブスには、大谷が苦手にしているブルペン右腕が一人いる。昨季、ヒューストン・アストロズにいたへクター・ネリス(34歳)だ。フォーシームの平均速度は93マイル(149km)で特に速くはないが、83マイル(133km)のスプリッターと併用することでとても有効。これまで6打数0安打2三振だ。2023年5月8日は7回に対戦し、高め直球に浅い左飛。7月14日の7回は93マイルの直球に振り遅れたあと、83マイルのスプリッターで空振り三振だった。

 大谷といえども、ネリス相手には良いスイングができていない。カブスが勝ちパターンになれば、カウンセル監督は大谷に当ててくるに違いない。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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