大谷翔平のドキュメンタリー映画の監督が感じた、地方から規格外スターが生まれた理由「都心だとスケールダウンにつながるリスクもあった」 (3ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文text by Shiratori Junichi

【当たり前のことを、当たり前にできる天才】

――日本ハム時代の監督である栗山英樹氏に、大谷選手が「本当に二刀流ができると思っていましたか?」と、問いかける場面もありました。栗山氏との出会いは「二刀流」の実現に欠かせなかったように思うのですが、2人のやりとりをどのように見ていましたか?

「これは僕の憶測にすぎませんが、どんな指揮官の下でも大谷選手は二刀流に挑戦し、素晴らしい結果を残せたんじゃないかと思います。二刀流を実現できた一番の要因は、やはり大谷選手自身が『二刀流を成し遂げられる』と信じていたことにあると思います。

 ただ、栗山さんも『オートマシーンの歯車』という例えをしていましたが、大谷選手の『二刀流に挑戦したい』という気持ちを汲み取り、実現させるまでの道のりを整えていった栗山さんとの出会いは重要だったと思いますね」

――満票でア・リーグMVPを獲得した2021年には、キャンプイン当初に「二刀流のラストチャンス」という声もありましたが、それをはねのけて見事に結果を残しましたね。

「おそらく、厳しい状況を乗り越えることさえも、大谷選手にとっては"普通"のことにすぎないのでしょう。僕から見て、大谷選手は"当たり前のことを、当たり前にできる天才"に映りました。他の人にとっては特別なことであっても、大谷選手にとっては自然なことにすぎない。『特別なことをしている』という感覚はあまりないんじゃないかなと思いました」

――「将来は大谷翔平選手のようになりたい」と思う子供たちが多いと思いますが、周囲の大人たちはそれをどのように見守るべきだと思いますか?

「現在の大谷選手の目覚ましい活躍は、本人の強靭な意志と努力、栗山さんをはじめとする周囲の方々が大谷選手の性格に合った方法を取り入れて、挑戦を全力でサポートしたことによるものだと思います。きっと『その子の個性に合った育て方』があると思うので、それを見極めながら、できる限り大人は型にはめようとせずに、そっと見守りつつ、適度に放っておくくらいが丁度いいんじゃないかと思います」

◆大谷翔平のドキュメンタリー映画『Shohei Ohtani - Beyond the Dream』

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【プロフィール】
時川徹(ときかわ・とおる)

ロサンゼルスを拠点とする映像監督。幼少期をアメリカとインドネシアで過ごす。東京大学を卒業後、広告代理店の電通でCMプランナーとしてキャリアをスタートしたあとに独立。パリとロンドンで音楽とファッション業界のディレクターとフォトグラファーとなり、映像制作の道に入る。短編映画『NOODLE SOUP』と『A BOX』は、ボストン、サンパウロ国際映画祭、カルロヴィ・ヴァリ映画祭、レインダンス映画祭などに正式上映され、『浮世絵ヒーローズ』はHotDocsに正式出品された。伝説のロックバンドKISSとの音楽ドキュメンタリー 『KISS vs. MCZ 』はメルボルン国際ドキュメンタリー映画祭のオフィシャル・コンペティションに選出され、ニューカッスル国際映画祭ではブレイクスルー・フィルムメーカー賞を受賞した。現在はロサンゼルスを拠点とする企画制作会社RIVERTIME ENTERTAINMENT INCの代表を務める。

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