WBCで侍ジャパン入りのヌートバー「誰かの邪魔をしたり、失礼なことはしたくない」。その素顔と数字が表す期待できる理由 (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

【侍ジャパンでも「胡椒挽き」が出るか】

「自分らしくいようと思っている。他の選手たちと親しくなれたら、チームにスパークをもたらす"エナジーガイ"になりたい。そしてチームが、流れを作れるようになることを望んでいる。ただ、誰かの邪魔をしたり、失礼なことはしたくない。だから様子を見ながらだけどね」

 そんなヌートバーが侍ジャパンに持ち込もうと思案しているのが、昨季のカージナルスで流行した"胡椒挽き(ペッパーミル)"パフォーマンスだ。

 パフォーマンスが生まれたのは、カージナルスがやや苦戦していた昨夏、控え捕手のアンドリュー・キスナーが「厳しい状況でも"grind(何とかこつこつ粘り抜く)"しよう」と言い出したことがきっかけだ。この「grind」という単語には、胡椒などを"挽く"という意味もあることから、誰かが好打するたびに、ベンチで選手たちが胡椒を挽くように手をぐるぐる回す仕草が流行したのだ。

 やがてベンチには本物の胡椒挽きが持ち込まれ、ヌートバーが中心になってのセレブレーションはセントルイスで人気になった。冒頭で述べたファンイベント中のサイン会に多くのファンが胡椒挽きを持って現れ、ヌートバーにサインをリクエストしていたことからも、その浸透ぶりが窺い知れる。

「(侍ジャパンでも)背景を話して、気に入ってもらえたらやるし、そうじゃなかったらやらない。楽しい部分を持ち込んで、みんながどう反応するか見てみたい。みんなが望んでくれたらぜひやりたいね」

 現状、日本語の会話は「まだ初歩的な言葉だけ」というヌートバーだが、コミュニケーションが得意なだけに侍ジャパンに馴染むのも早そうだ。粘りを意味する「grind」のニュアンスが日本人に理解されるかはわからないが、そのセレブレーションが定着したら面白い。

 このパフォーマンス以外にも、天性の"陽キャ"であるヌートバーがどんなリーダーシップを発揮するかも楽しみだ。もちろんチームにどういった形でハマるかはわからないが、うまくフィットすれば大きい。ヌートバーが"らしさ"を発揮し、セレブレーションが浸透するということは、日本が好調なプレーを続けて勝ち続けることを意味するに違いないからだ。

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