大谷翔平の「規定投球回の達成」はジャッジとのMVP争いに影響しない? 現地記者も「それなりの意味はある」と冷静 (2ページ目)

  • 澤良憲●取材・文 text by Sawa Yoshinori
  • photo by Kyodo News

規定投球回の達成自体はあまり触れられず

 圧倒的な成績と、投票選考に影響を与えそうな魅力的なストーリーが揃うジャッジだが、それでいえば大谷も引けを取らないはずだ。

 今季の大谷は、投手としては防御率2.47(7位)、奪三振203個(6位)、打者としては本塁打34本(10位)、長打率.530(8位)、OPS.887(9位)という上位の成績を残している。マグワイア記者も「ジャッジのMLB史上最高の打撃がなければ、大谷のMVPは間違いなかったはず。あるいは大谷がナ・リーグだったならば、間違いなく満票MVPだ。ア・リーグで同じ年に歴史に残るような対決が起こるのは、本当にクレイジーだ」と述べるほど、大谷もまたすばらしいシーズンを過ごしている。

 魅力的なストーリーという点でも、大谷は今季、ベーブ・ルース以来となる「2桁勝利&2桁本塁打」を達成したほか、「30本塁打以上&200奪三振以上」、さらに二刀流選手として史上初の「規定打席&規定投球回」のW達成も残り9イニングに迫るなど、十分なインパクトを残している。ただ、日本で注目されている規定投球回(162回)をクリアすることが、MVP投票に好影響を与えるかは微妙だ。

 取材したエンゼルス専門メディア『ヘイローズ・ヘブン』のジェイコブ・シスネロス記者は、「確かに先発投手として認められるには、一定のイニング数は必要です。そのイニング数を投げれば、『毎回5イニング以上を投げられ、試合を作れる投手だ』と証明できるので、それなりの意味はあると思います」と言うが、現地メディアが取り上げる大谷の投手に関する話題は、規定投球回を達成した場合の「サイ・ヤング賞」に関するものがほとんど。現地のMVP議論では、このことにはあまり触れられていない。

 もし規定投球回数を達成すれば、大谷は投手タイトルの選考資格を得られるが、それでも「大谷が絶対的なMVP受賞者だ」というには少々インパクトに欠けるのかもしれない。

 しかし期待できることもある。昨季のMVP投票で話題になったWAR(打撃・走塁・守備・投球を総合的に評価し選手の貢献度を表す指標)の数字が「MVPの決定打にならない」との証言が現地で多いことだ。

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