ダルビッシュは「ジャズ・ピアニスト」。
かつての大物投手とも共通点

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by getty Images

 前半戦は不振に喘いだダルビッシュ有だったが、オールスター以降は防御率2.93と復調。7月30日のカージナルス戦以降は5戦連続で8奪三振&無四球と、ここまでの5勝6敗という成績が示す以上に印象はいい。

 現地時間8月27日に、ニューヨークで披露した投球はあまりにも見事だった。

 プレーオフを争うメッツとの敵地での対戦で、8回を5安打1失点に抑えて今季5勝目(6敗)。多彩な変化球と抜群の制球力を武器に、若手好打者を数多く揃えたメッツ打線を手玉に取った。

後半戦で調子を上げてきたダルビッシュ後半戦で調子を上げてきたダルビッシュ 試合後、ダルビッシュの変幻自在なピッチングはメッツの選手、関係者の間でも話題にのぼっていた。とくに地元放送局『SNY』で解説者を務めた元メジャー136勝投手、ロン・ダーリングのこんな形容は印象深い。

「ダルビッシュはメジャーでも屈指のユニークなピッチャー。オリジナルの投球術を駆使するから、見ていて楽しい投手だ。たとえるなら、ジャズ・ピアニストのよう。多くの球種を操り、試合の中でさまざまなことを試し、新しい方向性を発掘しようとしているように見える」

"ジャズ・ピアニスト"とは言い得て妙かもしれない。メジャーでも先発投手は複数の球種を使い分けるものだが、ダルビッシュのように、カーブ、スライダー、チェンジアップ、スプリット、カットボール、ツーシーム、フォーシームと、文字どおり"7色の球種"を駆使する投手は珍しい。それらのすべてを、70マイルから90マイル台後半の速度で投げ分けてくる。

 さらに、カーブ、カットボールは数種類あるとのことで、記者席から目を凝らしても何を投げているのか判別できないことも多い。アメリカ広しといえど、こんなピッチャーはなかなかいるものではない。

"メジャーでも屈指のユニークな投手"というダーリングの言葉どおり、似たタイプの投手を探すのも簡単ではなさそうだ。それでも、ダルビッシュの現在地を探るため、実際に対戦したメッツの主力打者に「これまで対戦した中で、似ていると感じた投手はいるか」と尋ねてみた。すると、2人のビッグネームの名前が返ってきた。

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