検索

大谷翔平の同僚、プホルスとイチローに
共通する野球への探究心 (3ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • photo by Getty Images

 公式戦で初めて顔を合わせたのは、新人王を獲得した翌年の2002年6月だった。マリナーズの本拠地であるシアトルのセーフコ・フィールドで行なわれた交流戦。この時、プホルスはイチローにバットをお願いした。

 これまでいろんな選手に頼まれたことがあるイチローは、いつものようにサインをしてビジターのクラブハウスに送った。これはメジャーではよくあることだ。

 だが次の日、プホルスはもう1本、バットを頼んだ。しかも、今度はサインはなしでのお願いだった。イチローは驚いた。

「サインはいらないといった選手は初めて」と以前、取材でイチローが振り返ったことがある。

「どうやら使いたかったらしいのよ。プホルスが使うとは思わないじゃん、僕のバットを。僕は左バッターだし、スタイルだって違うし。でも、ちょっと面白い。僕のバットを使いたいと言うホームランバッターってあまりいないから。好奇心が強いんだろうなと思ってね」

 プホルスに確認すると、たしかに研究しているところだったと説明した。ともに新人王を獲得したといっても当時28歳のイチローは、プロとして11シーズン目。一方のプホルスはまだ22歳で、ドラフトされたのはつい3年前のことだった。

「試合で彼のバットを使ってみたかったんだけど、僕には小さすぎました」と以前の取材でプホルスが明かした。

「打撃練習では使いました。イチローがバットについて、どんな長さを求めているのか、どれだけの重さを必要としているのか知りたかったんです。木の素材にも興味がありましたし......。当時、私はまだ若かったですし、一流の選手がどんなバットを使っているのか情報を集めていました。イチローのバットはすごく、バランスが見事に取れた精密機械のようでした。それからその情報を生かして、自分に合うバットを選ぶようにしました」

 その翌年の2003年もふたりは顔を合わせた。シカゴで開催されたオールスターで、それぞれのリーグの投票数トップの選手がセレモニーに参加するのだが、そこにふたりが選ばれた。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る