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イチローの苦悩がわかる。
アトリーが語る「代打で試合に出る難しさ」 (3ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • photo by Getty Images

 日々の準備――当初はイチローもほかの選手と同様、5回ぐらいから打撃の準備を始めていた。しかし、予想よりも早く呼ばれることがあり、準備不足のまま打席に立つこともあった。それ以降、落ち着かない気持ちで打席に立つことがないよう、イチローは1回からでもベンチ裏のケージで打ち始め、専用のマシンで体を柔らかくするというルーティンを行なっている。アトリーは、まだルーティンに関しては試行錯誤というが、準備を最優先に考える姿勢は変わらないという。

「『準備をして呼ばれない方が、準備をせずに呼ばれるよりはずっといい』。これはジョン・ウーデン(数多くの優勝を誇るアメリカの大学バスケットボールの名監督)の名言ですが、私もそうだと信じています。たとえば、5回までずっと座っていて、その状態から突然呼ばれてすぐに行くというのは、私の年齢になると難しいことです。イチローならなおさらでしょう。ずっと座っているのではなく、早い段階から体を動かしてゲームに備えるイチローの工夫は賢いことだと思いますし、とても気になりますね」

 アトリーとイチローには、ほかにも共通点がある。それは1年契約でプレーを続けているということだ。なぜ後がない厳しい状況のなかでも、野球を続けるのかと問うと、こんな答えが返ってきた。

「契約とかお金とかではないです。ただ、野球が好きなんです。2008年にフィラデルフィア(・フィリーズ)で優勝したときの気分をまた味わいたい。実は、私はロスで生まれ育ち、ずっとドジャースのファンでした。だから、このチームには特別な思い入れがあるんです」

 これまで毎日のように試合に出ていた選手が代打として出場するというのは、技術の上でも、気持ちの上でも、並大抵のことではない。それでも、いつ訪れるかわからない出番に向けて全身全霊を傾ける姿は、まさにプロの中のプロと言うべきだろう。

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