オールスター史上初。10年前の「イチロー伝説」を覚えているか? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 オールスターゲーム前日の共同記者会見には、僕も取材で行っていました。オールスターゲーム選出についての感想を聞かれたとき、イチロー選手が発した言葉を今も鮮明に覚えています。

「パンチョさんが生きておられたら、大喜びしたでしょうね。そのことをいつも考えます」

「パンチョさん」とは、長年パ・リーグの広報部長を務めた一方で、野球解説者としてメジャーリーグの魅力を日本中に広めた第一人者・伊東一雄さんのことです。「パンチョ伊東」という愛称で多くの野球ファン、野球選手から愛されていました。2002年7月4日に68歳で亡くなられたのですが、生前の伊東さんはイチロー選手のことをいつも気にかけ、イチロー選手も特別な人物として接していました。

 その言葉をサンフランシスコという場所で発したことが、僕にとって非常に感慨深かったのです。というのも、伊東さんとは1975年に初めてメジャーリーグ観戦をご一緒させていただいたのですが、その最初の地がサンフランシスコでした。

 余談になりますが、伊東さんは毎年サンフランシスコに行くと、観光名所のフィッシャーマンズワーフにあるジョー・ディマジオのイタリア料理店に訪れていました。ディマジオはサンフランスコからほど近い地元マーティネズ出身なのです。ゴールンデンゲートブリッジをクルマで渡ったり、芸術家の街サウサリートや港町ティブロンなどを伊東さんに案内していただいたのが、僕にとって忘れられない思い出です。サンフランシスコの街を伊東さんが愛していたことをイチロー選手は知らないと思いますが、あのときの言葉は本当にビックリしました。

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