2014.05.14

田中将大、全試合QSの安定感を生む「逆転の発想」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Getty Images

 彼にストレートへの特別なこだわりはない。以前、そんな話を彼から聞いたことがある。

「真っすぐにこだわっているというわけではなく、全部の球種で抑えられるようになるということです。力勝負というと、真っすぐを思い浮かべるのかもしれませんが、自分の持っている力と相手の持っている力がぶつかり合えば、それは力勝負じゃないですか。僕は、ストレートだけが力勝負だとは思いません。たとえて言うなら、怪獣が口を広げて待っているところに飛び込んでいけるわけがないってことです(笑)」

現地時間5月9日のブリュワーズ戦で6回1/3を2失点に抑え、5勝目を挙げた田中将大。

 おそらくは、本音半分、強がり半分ではないだろうか。それでも、愚直なまでにストレートにこだわって斬られるくらいなら、そんなこだわりを捨てる強さを彼は持っている。

 メジャーデビューから、無傷の5連勝。

 田中将大は、日本時代から数えて”レギュラーシーズン33連勝”という、とてつもない記録を続けている。

 5月9日(現地時間)、ウィスコンシン州ミルウォーキー。

 田中が「これまでの中でも一番硬く感じた」というミラーパークのマウンドで、それでも立ち上がりの彼はポンポンとテンポよくアウトを稼いだ。5回を終わって、ブリュワーズ打線に打たれたヒットは2本、与えたフォアボールは1個。5つの三振を奪い、得点は1点も許さない。

 ところがこの日の田中は、思うようにボールを操ることができていなかった。

 とりわけ危なかったのは、ストレートだ。

 これまでの田中の武器がスプリットだったことは、疑う余地がない。ストレートと見紛(みまが)うほどの軌道で近づいてくるボールが、まるでバットを避けるように沈んでいく。あんなワンバウンドに手を出すなんて……と戦わないヤツらが笑うような空振りも、戦う方から見れば手を出すなという方が無理な話なのだと、何人もの選手から聞いたことがある。そんな伝家の宝刀は、海を渡っても抜群の切れ味を発揮し、メジャーのバッターを翻弄してきた。。