負けない田中将大に早くも飛び出した「サイ・ヤング賞」の声

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 メジャーに来ても負けない田中将大。日米通算31連勝を飾った相手はヤンキースの宿敵・レッドソックスであり、しかも場所は敵地フェンウェイパークだった。

メジャーでもいまだ負け知らずの田中将大。メジャーでもいまだ負け知らずの田中将大。

 1912年に開場したメジャー最古の球場は、古き良き伝統をそのまま残し、観客席とフィールドの距離はどこの球場よりも近い。選手とファンとの一体感がチームを強烈に後押しし、他の球場にはない雰囲気を作り出している。ヤンキース相手ともなれば、ファンたちは自分たちの声援で"悪の帝国(ヤンキース)"を蹴散らそうとする。

 その聖地で行なわれた伝統の一戦。そこで田中は、熱狂的なレッドソックスファンを圧巻の投球で完全に黙らせた。デービッド・オルティスとマイク・ナポリにメジャー初となる連続ホームランを喫したが、8回途中までを投げ、被安打7、失点2、奪三振7。レッドソックスファンが声を張り上げて喜んだのは、3時間17分の試合時間のうち5分もなかったであろう。田中は常に自分のペースでボールを投げ、この日集まった3万7014人の観衆の歓声をため息へと変えてしまった。それどころか8回一死、105球を投げ終えたところで降板すると、レッドソックスファンから好意的な声援まで送られたのだった。

 敵将のジョン・ファレルが「スプリットが良く、打者は振らされてしまった。田中は常に投手有利のカウントを作りだしていた」と言えば、4番のナポリは「球種が豊富で制球が素晴らしい。どんな球でも、どんな状況でもストライクを取ることができる投手だ」と評した。それだけではない。翌日のボストン地元紙は、素直に田中の実力を認めた。

 ボストン・グローブ紙は「レッドソックスは今後7年間、田中の試合を凌いでいかなければならない。なぜなら、彼は本物だから」と伝えた。さらに、ボストン・ヘラルド紙は「ヤンキースは2020年まで田中との契約がある。まさに価値のある投資であり、投手だ」と報じた。過去にこんなことがあっただろうか。ボストンの地元紙がヤンキースの選手を称えるなんて、まずありえないことだ。それだけ田中の存在は突出していると言っていい。

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