メジャーリーグ2013。ひっそりと引退していった男たち
毎年、メジャーリーグに挑戦してくる若者がいる一方で、静かに球界を去って行く者もいます。2013年も、偉大なメジャーリーガーが何人も引退しました。ニューヨーク・ヤンキースのマリアノ・リベラのように、盛大な引退セレモニーで幕を下ろせる選手は、ほんのひと握り。それ以外の選手は、ひっそりと自分の野球人生にピリオドを打ちます。そこで今回は、そんな彼らにスポットを当てたいと思います。
2004年のア・リーグMVPに輝いたブラディミール・ゲレーロも静かにユニフォームを脱いだ まずは、メジャー史に名を刻んだバッターたちから紹介しましょう。最初に取り上げたいバッターは、コロラド・ロッキーズのトッド・ヘルトン(40歳)です。彼は1997年からロッキーズひと筋で17年間プレイし、現代のメジャーにおいて非常に珍しいフランチャイズプレイヤーでした。物静かな性格で、決して派手な選手ではありませんでしたが、2000年に首位打者と打点王の二冠に輝くなど、ロッキーズ史上最高のバッターだと思います。何よりすごいのが、これまで、『ザ・マン』の愛称で親しまれた元セントルイス・カージナルスのスタン・ミュージアルしか達成したことのない「通算打率.315・2500安打・550二塁打・350本塁打」という大記録を成し遂げている点です。
また、1961年のエクスパンション(球団拡張)以降、ひとつの球場で5番目に多いヒット数を残したことも特筆すべきでしょう。ヘルトンは本拠地のクアーズフィールドで、通算1394安打を記録しています。上位4人は、元ボストン・レッドソックスのカール・ヤストレムスキー(1961年〜1983年/フェンウェイパーク)、元カンザスシティ・ロイヤルズのジョージ・ブレット(1973年〜1993年/カウフマン・スタジアム)、元ミルウォーキー・ブルワーズのロビン・ヨーント(1974年〜1993年/カウンティ・スタジアム)、元サンディエゴ・パドレスのトニー・グウィン(1982年〜2001年/クアルコム・スタジアム)です。全員、それぞれのチームひと筋のフランチャイズプレイヤーで、4人とも殿堂入りを果たしています。ヘルトンも殿堂入りするのは、間違いないでしょう。
続いて紹介したいのは、2011年までメジャーでプレイしていたブラディミール・ゲレーロ(38歳)です。1996年、モントリオール・エクスポズ(現ワシントン・ナショナルズ)からキャリアをスタートさせたゲレーロは、メジャー16年間で通算打率.318、通算ホームラン数449本。1998年から5年連続で「打率3割・30本塁打・100打点」をマークした名スラッガーでした。オールスターに9回出場し、2004年のロサンゼルス・エンゼルス時代にはア・リーグMVPも受賞。前出のヘルトンとは対照的に、実に派手なプレイヤーでした。
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著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)