上原浩治が辛口のボストンメディアに愛されたワケ (2ページ目)
その上原が、地元に限らず全米メディアの注目を浴びるようになったのは9月に入ってからだ。
「レッドソックス守護神の上原は、どうやら全然走者を出していないらしい」
「登板のたびに3者凡退だって?」
9月17日のオリオールズ戦でバレンシアに三塁打を許すまで、打者37人を連続アウトという球団記録を打ち立てた。救援投手としては史上2番目に長い記録。この頃から、各メディアで「ニンジャ」「魔法使い」「マジシャン」などの枕詞が使われるようになる。
抜群の制球力、球の伸びや切れで、強打者を次々と煙に巻く上原のピッチングを、米メディアは「Untouchable(手が付けられない)」 「Flawless(完璧)」という最高級の褒め言葉で表現する。実際、今季の成績は、完璧に近い数字だった。レギュラーシーズン73試合に登板し、4勝1敗21セーブ。 セットアッパー時には13ホールドを記録し、防御率は1.09。また、WHIP(※)は0.57をマークし、救援投手としてのメジャー記録を打ち立てた。
(※)WHIPとは、被安打数と与四球数(与死球数は含まない)を投球回数で割った数値で、1イニングあたり何人の走者を出したかを表わす。WHIP1.00未満なら球界を代表する投手と言われている。
プレイオフに入ってからの快進撃はご存知の通り。デトロイト・タイガースと戦ったリーグ優勝決定シリーズ、カージナルスとのワールドシリーズでは合計10試合に登板して無失点。地区シリーズを含めたプレイオフでは計7セーブを記録し、ジョン・ウィテランド(1996年、ヤンキース)、トロイ・パーシバル(2002年、エンゼルス)、ロブ・ネン(2002年、ジャイアンツ)、ブラッド・リッジ(2008、年フィリーズ)に並ぶ歴代最多タイとなった。
ファレル監督に「9回にコウジをマウンドに呼ぶ投手交代の時が、もっとも心穏やかになれる瞬間だ」と言わしめるほどの信頼を勝ち取った上原は、その仕事の速さと正確さで、メディアすらも味方につけていた。
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