【MLB】愛すべき救世主・川﨑宗則が再びメジャーにたどり着くまで

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Reuters/AFLO

3月中旬にチームに合流した川崎宗則だが、明るい性格ですでにチームの人気者に3月中旬にチームに合流した川崎宗則だが、明るい性格ですでにチームの人気者に 4月19日(現地時間)から21日のヤンキース戦。普段は閑古鳥が鳴くことが多いトロント・ブルージェイズの本拠地ロジャース・センターに、3連戦で12万人を超える観客が集まった。その大観衆の声援を一身に集めたのが川崎宗則だった。イチローはその大声援を聞き、自身の耳を疑ったという。

「なに、あの歓声? 信じられん......。だって、あれはジーターがニューヨークに帰ってきた時と同じくらいの歓声ですよ。ちょっと考えられないですよ」

 メジャーに昇格して、川﨑はまだ本拠地で6試合しかプレイしていない。なのに、すでにライトの席には"KAWASAKI CORNER"が設けられ、球場内にあるチームショップでは背番号66のレプリカ・ジャージが150ドルで早くも販売されている。店員によれば、「入荷してもすぐに売り切れてしまう」ほどの人気なのだという。イチローが驚くのも無理はない。トロントでは今、「川﨑フィーバー」が起きているのだ。

 突如チームに現れた日本人選手が、なぜここまでの人気を集めるのか。川﨑はほとんど英語が話せないし、通訳もいない。それでも地元メディアの取材を快く受ける。そしてこう言うのだ。

「I can't speak English.Because I'm Japanese.アリガトウネ、オレ、ガンバル。Thank you,Good luck!」

 ファンに声をかけられても、対応は変わらない。いつも明るく振舞う姿に、誰もが笑顔になってしまう。それはグラウンドでも同じ。常に全力プレイでグラウンドを走り回る姿に、多くのファンは好感を抱くのだ。だが、ブルージェイズのファンに愛された理由は、これまでチームになかったプレイスタイルを持ち込んだことも大きかったのではないか。

 川﨑が本拠地で初めてマルチ安打を放った4月17日のホワイトソックス戦のことだ。この試合の第2打席で川﨑は11球粘った末に四球を選び出塁した。ブルージェイズ打線はホセ・バティスタを筆頭に本塁打を打てる打者は揃っているが、大振りで荒削りな打者が多い。その中で、必死に粘りながら四球を選んだ川﨑のスタイルは、スポーツ・イラストレイテッド(電子版)が「チームを変えた男」と評価したほどだった。

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