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【MLB】打率1割台でもスタメンになれるメジャーの評価基準 (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 さらにライアンがすごいのは、好プレイ(グッドフィールディングプレイ/GFP)とミスプレイ(ディフェンシブミスプレイ&エラー/DM&E)の比率が、他の選手と比べて抜きん出ている点です。平均的なショートの好プレイとミスプレイの比率は『2:1』。しかし5月のライアンは、好プレイ『17』に対してミスプレイ『4』と、実に『4:1』の比率でした。これは、ショートとしては驚異的な数字です。

 マリナーズのなかでもライアンは、決して目立つ存在ではありません。アメリカのスポーツニュース番組の好プレイ集を見ていても、ライアンが登場する機会は決して多くないでしょう。でもそれは、ライアンが難しいボールも簡単にさばいているからなのです。

 マリナーズのエリック・ウェッジ監督は、「どんな難しいプレイでも簡単に見えてしまうのは、ライアンの予測が的中しているからだ」と絶賛しています。つまりライアンは、味方のピッチャーが投げる球種によって、相手バッターの打球の方向が三遊間か、それとも二遊間かを予測し、小まめにポジションを変えているのです。テレビでは映りにくいプレイですが、ライアンは実に玄人(くろうと)好みのする『現役最高のショートストップ』と言えるでしょう。

 今季、打率.160前後のライアンがスタメンに名を連ねているのを見て、「なぜ、使われ続けているのか?」「川崎選手を起用した方がいいのではないか?」と疑問を持つ方もいるかと思います。しかし、バッティング以上に守備での貢献度が高く評価されるショートのポジションだからこそ、ライアンは生き残っていけるのです。ウェッジ監督も「どんなに打率が低くても使い続ける」と明言しています。なんといっても、それだけ守備で失点を防いでいるわけですから。

 メジャーでは守備防御点を筆頭に、好プレイやミスプレイの数字などで選手の守備力を示す土壌が確立しています。こういったさまざまなデータをもとに、スポーツ専門チャンネル『ESPN』が選出する5月の『月間最優秀守備選手』に、見事ライアンは選ばれました。ちなみに2位は、チームメイトのイチロー選手です。成績は、守備防御点『6DRS』で、好プレイ『15』、ミスプレイ『2』。今、イチロー選手のバッティングは好調とは言い難いですが、外野手として守備面でしっかりと評価されているのです。

 バッティングはもちろん重要な要素ですが、打率が1割でもスタメン出場できるポジションがメジャーリーグには存在します。決して派手ではありませんが、『守備』という側面からゲームを見るのも楽しいと思いますし、日本人メジャーがレギュラーを獲るために、いかに厳しいハードルと闘っているのか理解するキッカケになれば嬉しいかぎりです。

著者プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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