【MLB】川﨑宗則「3Aに落ちたって、別に死ぬわけじゃない」

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

開幕メジャーに向けてアピールを続けている川﨑宗則開幕メジャーに向けてアピールを続けている川﨑宗則 メジャー昇格が現実味を帯びてきている。シアトルマリナーズのキャンプに招待選手として参加している川﨑宗則が、現地3月2日から始まったオープン戦で好成績を残している。

 4日の自身2戦目で初安打を放つと5日のパドレス戦ではタイムリーやスクイズなどで3打点をマーク。さらに6日のレッズ戦では、「2番川﨑、3番イチロー」の打順実現に大喜び。試合でも無死一、二塁の場面に絶妙なバント安打で満塁の好機を演出し、イチローがタイムリーを放つという最高の形を作り上げ、「今日は僕の記念日」と満足げだった。また10日のダイヤモンドバックスでは3安打の固め打ち。対応力の高さを見せつけている。

 初戦は手も足も出なかった。3打数ノーヒット、見逃し三振2つ。メジャー特有の外角の広いストライクゾーンに戸惑い、3打席目などは一度もバットが出ず、すべて直球での3球三振だった。だが、川﨑は試合後の首脳陣からのアドバイスを明かしてくれた。

「『メジャーの投手は8割以上外角で勝負をしてくる。だから外を待つ方が、確率が高い。もしインコースを見逃し三振してベンチに戻ってきても我々は何も言わない。ヘルメットに右手をやって主審に一礼して帰ってくればいいんだ』と言われました(笑)」

 その言葉だけでこれほどの変化である。そもそもマイナー契約で渡米した川﨑に対して「本当にやっていけるのか」と懐疑的な見方が強かった。だが、彼は日本代表の常連選手である。2006年の第1回WBC、08年の北京五輪、09年の第2回WBCにすべて選出されている。ちなみにこの3つの大会すべてに出場したのは、藤川球児(阪神)、杉内俊哉(巨人)、青木宣親(ブルワーズ)と川﨑の4人しかいない。それだけの選手であるにもかかわらず、評価自体が低すぎたのだ。マリナーズのチーム内からは、「守備と足はメジャーで十分にやっていけるレベル。開幕25人枠に入る可能性はある」との声が聞かれる。ならばと、日本人メディアもテンション高く、「大事なオープン戦ですね」「開幕メジャーへもっとアピールを」と川﨑を囃(はや)し立てる。

 だが、彼自身の思いは、まったく別のところにあった――。

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