2012.02.28

【MLB】「3番・イチロー」を決断したマリナーズの真の狙いとは?

  • 小西慶三●文 text by Konishi Keizo
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

ウェッジ監督から3番での起用を言い渡されたイチロー「3番・イチロー」――メジャー屈指のリードオフマンを打線の要に移し替える決断から、現在のマリナーズを取り巻く状況と中長期的展望がうかがえる。

 2012年は若手に経験を積ませ、数年後の主力を育てるシーズンになる。2010年後半からのチーム方針は今季も続く。昨季デビューの二塁手ダスティン・アクリー、今春ヤンキースとのトレードで獲得した捕手兼指名打者のヘスス・モンテロ、昨季は故障に苦しんだ一塁手ジャスティン・スモークらがその期待を背負う。

 投手陣はマイナーに20歳の大型右腕タイワン・ウォーカー、昨季アリゾナ秋季リーグでオールスターに選ばれた左腕ダニー・ハルツェン、長身左腕のジェイミー・パクストンら将来のエース候補3人が控える。彼らの台頭を待ち、巻き返しの起点と目されるのが2014年あたり。それまでは組織としての効率化を進め、反攻の力を蓄えるというのが球団内外から聞こえてくる長期展望だ。イチローの3番起用はその大きな流れの一環と考えられる。

 この打順変更は昨年途中から検討されてきた。「チームのこれからを考えて、去年の途中から何度もふたりで話し合ってきた」とエリック・ウェッジ監督が話したとおり、昨季終了までにイチローも配置転換を了承していた。3割30本塁打が計算できる、いわゆるオーソドックスな3番打者は現在のマリナーズにはいない。そこで経験値、対応力などを考慮し、現時点での最適任者としてイチローに白羽の矢が立った。

「3番・イチロー」の、日米メディアの受け止め方は違っている。日本ではイチローが新たな役割をどうこなすかが注目される一方、シアトルの地元メディアではショーン・フィギンズ再生のためという論調が主流だ。

 フィギンズは今季が4年契約・総額3600万ドル(約29億円)の3年目。過去2年間でほとんど機能していなかった快足三塁手をエンゼルス時代と同じ1番に置き、最後のチャンスを与える。打順の組み替えは昨年、一昨年と歴史的貧打に苦しんだチームの攻撃力アップが第一義にあるが、フィギンズがチャンスメーカーとして以前のようなプレイを取り戻せば、シーズン途中のトレードなど新たな選択肢が生まれる。フィギンズの1番起用はいわば"投資回収"の意味合いが強い暫定案とも言える。