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5球団競合の155キロ右腕・由規が見せた"怪物らしからぬ素顔" 「もともと左利きなんです」「メンタルも強くないんです」 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Masahiko Abe

 驚いたものだ。兄も十分にスゴかった。それでも、何かというと、「自分なんて、全然なんで......」と口にする。そのネガティブさが、かえって興味をそそった。

「自分、メンタルも強くないんですよ」

 コンスタントに140キロ後半から150キロ台をマークする快速球を前面に押し出し、力勝負で真っ向から戦いを挑む威勢のいい投げっぷり。メディアもプロ側も、そんな「外見」の印象にとらわれ、強靱な勝負度胸を持った投手のように見ていた。

 でも、人間なんて、会って、話をしてみなきゃわからない。

 そういえば......と、思い浮かんだことがあった。この取材の2カ月ほど前、夏の甲子園でのことだ。初戦の智辯和歌山戦で154キロをマークするなど17三振を奪い、2失点完投勝利。由規への注目度は、さらに一段上がっていた。

 続く2回戦の相手は、智辯和歌山と兄弟校の智辯学園(奈良)。4回、先頭打者へ5球目を投じた直後、スコアボードにはスピードガン導入以降、当時の甲子園最速となる「155キロ」が表示され、スタンドがどよめいた。

 ところが5回、突如として乱れ、この回だけで5失点。なかでも印象に残ったのが、2番を打つ1年生・稲森翔大(関西大−カナフレックス)に152キロをセンター前へ弾き返された一打だった。きゃしゃな体つきの1年生に、完全に捉えられた。

 その兆しは、前の4回からあった。由規はセンター後方のスコアボードを盛んに振り返るようになった。投げるたびに振り返り、球速表示に目をやる。自分の体感と、表示される「数字」に微妙な誤差を感じていたのだろう。ちょっと「数字」に頼ってるかな......そんなふうに見えた。

 自分の球威に確信を持っている投手は、投げたボールがどれだけ打者を圧倒しているかをバロメーターにしているから、スコアボードを何度も振り返ることはめったにない。高校時代、マウンドに立つ大阪桐蔭の中田翔が、まさにそうだった。

 由規は、あれだけの快速球とスライダーを持ちながら、その時は目の前の打者だけに集中しきれていなかったように見えた。ブルペンで本人の口から聞いた「メンタルも強くない」という言葉と、あの甲子園での光景が、初めて私のなかでつながった。

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