5球団競合の155キロ右腕・由規が見せた"怪物らしからぬ素顔" 「もともと左利きなんです」「メンタルも強くないんです」 (2ページ目)
由規、高校3年生の秋。
すでに夏の甲子園で155キロ、日米親善試合では157キロをマークしているのだから、別に驚くこともないのだが、やっぱりスタンドから見る150キロと、この左手で受ける150キロは、まるで「別物」なんだ。
由規のストレートは硬かった。「何を投げてきたんだ」と思うほど"硬い"ストレートだった。そんなわけがあるはずもないのに、ボールが違うんじゃないかと思って、最初の1球を手の中でぐるりと回し、確かめてしまったほどだ。
硬いから、痛い。今まで、「パシーン」「ズバーン」「ドッスーン」と、いろんな捕球感のストレートを受けてきたが、「ガツーン!」と来るのは初めてだった。あとで由規の右手を見せてもらったのだが、「この手で150キロを放るのか!」と思うほどコンパクトだった。
「自分なんか、指も長くないし、体だってたいして大きくないし、身体能力なんかチームでも真ん中らへんか、下のほうかもしれない。足だって速いほうじゃないですから......」
自虐的な言葉が並ぶ。150キロを超える剛腕なのだから、もっと肩をいからせて自慢話でもするのかと思っていたから、意外だった。
「野球の素質だったら、絶対に弟のほうです。あいつはスゴい! 足も抜群に速いし、今、中3ですけど、もう140キロぐらい軽く投げるし、バッティングも飛ばす能力がスゴくて! 小さい頃から、カブトムシを捕るのも、木登りでも、何ひとつかなわなかったですから」
自分のことを語る時はなんだか憂鬱そうなのに、弟の話になると、かわいい息子を語るお父さんみたいな顔になる。その弟は翌春、由規の卒業と入れ違いで仙台育英に入学。おもに俊足強打の外野手として活躍し、やがて兄の後を追って育成選手としてヤクルトに入団する佐藤貴規である。
【左で投げて遠投70メートルの衝撃】
「自分、もともと左利きなんですよ」
由規が突然、そんな予期せぬことを切り出した。
「今でも50メートルぐらい投げられますよ」と言われて、それじゃあ、と投げてもらったら、軽く70メートルを投げた。そして、「ウソじゃないでしょっ!」という顔をされた。
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