【夏の甲子園2026】地方大会で打率.917→甲子園では4打席凡退 鳥取城北・宮野快生の「魔法」はなぜ解けたのか (3ページ目)
しかし、甲子園ではその「魔法」も解けてしまったのか。宮野は岡山学芸館の先発左腕・田路惣一朗(とうじ・そういちろう)の前に、4打席凡退に倒れている。試合は3対7で敗れ、鳥取県勢の夏の甲子園11連敗となった。
【この夏、初めて対戦した左投手】
試合後、宮野は沈んだトーンで自身の打撃について振り返った。
「いいピッチャーに対して打たされてしまって、自分のスイングができませんでした」
岡山学芸館バッテリーに相当研究されたのだろう。変化球主体で攻められ、宮野は本来の力強いスイングを封じられた。
ふと、あることに気がついた。鳥取大会で宮野が立った16打席は、すべて右投手との対戦だった。その点を指摘すると、宮野はうなずいてこう答えた。
「自分は左ピッチャーの変化球に課題があるんです。鳥取大会で結果を残せた大きな要因のひとつは、左ピッチャーと対戦しなかったことにあると思います」
鳥取大会を終えて関西地方に入ってから、打撃練習で自身の状態がピークを過ぎていることにも気づいていた。
まるで魔法が解けてしまったような感覚なのだろうか。そう尋ねると、宮野はこう答えた。
「そうですね......。今日の自分は、いたって普通(の打者)というか......」
高校卒業後は大学で野球を続ける予定だ。そして、将来的には教員を目指したいという。
「今の担任の先生が、自分の理想なんです。優しいけど、言うべきことはしっかりと言ってくれる。大学で『野球で生きていくのは厳しい』と感じたら、教師の道も考えていきます」
ちなみに、甲子園初戦の前日にはトンカツを食べたのか。そう尋ねると、宮野は気まずそうな表情でこう答えた。
「いえ、昨日はホテルの近くでカツ丼は食べたんですけど......」
卵でとじてしまったのか......。思わずそんな感想が頭をよぎったが、もちろん、敗因がトンカツにあるはずもない。宮野自身、この一戦で自らの課題を痛感していた。
驚異の9割打者は聖地で己を見つめ直し、新たな一歩を踏み出そうとしている。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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