【高校野球】速さだけが正義じゃない! 130キロ台の速球で打者を翻弄したふたりの左腕が突きつけた"投手評価の本質" (2ページ目)
9回144球、3失点で完投した冨岡について、香川監督はこう評価する。
「スピードがよく話題になりますが、ピッチャーの評価はそれだけじゃない。僕が評価するのは試合をつくれるかどうかです。そのためのメンタルも重要です。今日の冨岡はいろいろな球種でストライクを取れていたし、ほんとによかった。最後に追い上げられましたが、彼が打たれたわけでも、フォアボールを出したわけでもない。とにかく最後まで粘り強く投げてくれました。ただ、今日は......ですよ」
そう言って、笑顔を見せた。
香川監督が挙げる「いい投手の条件」はシンプルだ。
「コントロールと、複数の球種でストライクが取れること。あとは、メンタルですね。冨岡は大きな試合でも緊張しないし、いつもマイペース。だから130キロ台のストレートでも抑えられるんです」
一方の冨岡本人は、淡々と振り返った。
「初回から三振が取れて、いい感じで投げられました。終盤は自分らしいピッチングができたと思います。スライダーとチェンジアップは高い確率でストライクが取れる球ですし、冬はストレートの質を上げる練習をしてきたので、打者には真っすぐが走って見えたと思います」
佐野日大戦で好投した三重の上田晴優 photo by Ryuki Matsuhashiこの記事に関連する写真を見る
【内野ゴロ17個の圧巻の投球】
同日の第3試合では、三重の左腕・上田晴優(せいゆう)も好投を見せた。最速133キロながら、変化球を低めに集め、8回2/3で内野ゴロ17個。理想的な「打たせて取る」投球で佐野日大(栃木)を無失点に抑えた。
「ブルペンからストレートがよかった。冬は内外角の投げ分けを重点的に練習してきました」
与四球はゼロ。
「とにかく低めに集めることだけを意識しました」
冷静に見えたマウンドの裏側で、本人は強い緊張を感じていたという。
「すごく緊張していました。でもアルプスを見て『みんなが味方だ』と思えた。初球にカーブを選んだのは、一番ストライクが取れる球だったからです」
決勝打を放ち、上田を支えた捕手・大西新史も「いい投手像」をこう語る。
「コントロールとキレ。やっぱり一番はコントロールです」
甲子園から速球派が去る一方で、130キロ台のストレートで打者を翻弄する左腕たちが、大会をより奥深いものにしている。
著者プロフィール
元永知宏 (もとなが・ともひろ)
1968年、愛媛県生まれ。 立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。 大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。著書に『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)、『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)など多数。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長
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