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【高校野球】速さだけが正義じゃない! 130キロ台の速球で打者を翻弄したふたりの左腕が突きつけた"投手評価の本質"

  • 元永知宏●文 text by Tomohiro Motonaga

 勝利チームの校歌斉唱が終わったあと、バックネット裏からこんな声が飛んだ。

「なんであんなに遅い球、打てんのや!」

 今や160キロ超のストレートが珍しくないメジャーリーグやWBC中継に慣れたファンにとって、130キロ前後の球速は「遅い」と映るのかもしれない。

高川学園戦で完投勝利した英明の冨岡琥希 photo by Ryuki Matsuhashi高川学園戦で完投勝利した英明の冨岡琥希 photo by Ryuki Matsuhashiこの記事に関連する写真を見る

【最速146キロのプロ注目右腕に勝利】

 だが、大会5日目の第2試合に登場した英明(香川)の左腕エース・冨岡琥希(こうき/3年)が、その"遅さ"を武器に勝利を引き寄せた。

 中国王者・高川学園(山口)との初戦。冨岡をリードし、完投勝利へ導いた捕手・高田斗稀(とうま/3年)はこう振り返る。

「高川学園はストレート狙いだと思ったので、緩急を使おうと。冨岡はスライダー、カーブ、チェンジアップがあるので、真っすぐが生きる配球ができたと思います。テンポもよく投げてくれました」

 試合は、最速146キロのプロ注目右腕、高川学園のエース・木下瑛二(3年)との投手戦。だが4回、英明が相手のミスにつけ込んで3点を先制すると、5回にも加点し主導権を握った。

 最終回には守備の乱れから2点差まで迫られたものの、冨岡が最後まで投げきった。高田がピンチの場面を振り返る。

「点差があったので、ランナーを気にしすぎず、落ち着いて投げようと話しました」

 2回戦では、帝京長岡(新潟)を下した東北(宮城)と対戦する。

「今日は緩い球でカウントを取りましたが、相手によってリードは変わります。コントロールよく投げてくれれば、守備のテンポもよくなるはずです」

【英明の指揮官が挙げる"いい投手の条件"】

 試合後、英明の香川純平監督は穏やかな表情で語った。

「いろいろ準備はしてきましたが、『迷ったら自分の感性でいけ』と高田には伝えていました。悪送球で流れを悪くした場面もありましたが、積極的にいった結果ですから。大会中は足を止めることなく、思いきってやってほしい」

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著者プロフィール

  • 元永知宏

    元永知宏 (もとなが・ともひろ)

    1968年、愛媛県生まれ。 立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。 大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。著書に『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)、『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)など多数。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長

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