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【高校野球】「ベンチ外からDHで甲子園先発へ」守れなくても打てばいい 新制度が救った2人の逆転ストーリー (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Takahiro Kikuchi

 ただ体が大きいだけでなく、握力78キロの怪力の持ち主だ。父・達治さんは高校時代にウエイトリフティングの全国2位に輝いたという。その血を受け継ぐ中森も、ベンチプレスで120キロの重量を持ち上げる。

 大会前の甲子園練習ではサク越え本塁打を放つなど、アピールに成功。背番号17をつけ、DHでの先発出場を勝ち取った。

【代走要員も昨秋はベンチ外】 

 甲子園の打席に立った中森は、高揚感を覚えていた。

「みんなに応援されて打席に立つのは初めてで、力が湧いてくる感じがしました。試合に出ている人の気持ちがわかりました」

 2打席凡退で迎えた3打席目、1点ビハインドを追う8回表に見せ場が訪れた。一死一塁の場面で打席が回ってきた中森は、三遊間にゴロを放った。強烈な打球は三塁手のグラブ下をかすめ、左翼へと抜けていった。記録は失策だったが、花咲徳栄のチャンスを広げる一打だった。

 その直後、一塁走者の中森に代走・山田蒼二郎(そうじろう)が起用された。中森にとっては、「いつもどおり」の起用パターンだった。

「自分も山田もセンバツで初めてベンチに入って、自分はバッティング、山田は走塁の役目を任されているんです。練習試合でも自分が打った後に、いつも山田が代走でかき回すことが決まっていました」

 まさに一心同体。「ふたりでひとりですね」と尋ねると、中森はこの日一番の笑顔で「はい!」とうなずいた。

 花咲徳栄はこの回、3得点を挙げて逆転に成功。勝ち越しのホームを踏んだのは、山田だった。

 この日、第1試合の気温は7〜8度。スタンドでは厚手のコートを着込んでいても、肌寒さを覚える気候だった。しかし、中森は試合を通して半袖で過ごしている。

 寒くなかったのか尋ねると、中森は事もなげに「暑かったです」と答えた。

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