異次元のスピードで甲子園を席巻したオコエ瑠偉 一塁強襲二塁打、1イニング2三塁打、超美守... (2ページ目)
【三塁到達スピードはプロでもトップクラス】
だがいくらなんでも、塁間3歩はないだろう。そのことを本人にぶつけると、こんな答えが返ってきた。
「3歩......それはさすがに、人間じゃないですね(笑)。短距離はそうでもないんです。現に、チームでも井橋(俊貴)は僕より速いし、あるいは下級生でも5、6人いますよ。でも僕は、ベーラン(ベースランニング)が得意で。距離が長ければ長いほどよくて。二塁打はトップスピードに乗る前にベースに着いちゃうので、三塁打が一番速いですね」
50メートル5秒96はむろん俊足の部類だが、ずば抜けて速くはない。だが、三塁到達タイムとなると10・88秒で、これはプロ球界でもトップクラスだそうだ。
ヒット性の打球を放つと、ふつうは一塁に走りながら3フィートラインあたりから右にふくらみ、一塁を回って二塁をうかがう。だがオコエは、打った瞬間にヒットと判断したら、スタートからゆるい弧を描くように一塁を目指し、左足でキャンバスを蹴って二塁を狙う。
オコエによると、「そのほうが、いざ二塁に走るときに減速しないし、距離的にも効率がいい」ためで、そのあたりはなかなかクレバーでもある。
ただ甲子園期間中のオコエは、こと走塁に関しては、本調子ではなかったらしい。
「東東京大会で使う神宮は人工芝で、甲子園の走路は土。感覚の違いがあって、塁間の歩数が合っていなかったんです。だから三塁へのスライディングでも、遠くから滑りすぎて飛んじゃっているんですよね。また、神宮の赤土とでは、滑った時のスピードも違いました」
【中学まではホームランバッター】
すらりと長い四肢はナイジェリア人の父から受け継いだ。名前の「瑠偉」は、Jリーグで活躍したラモス瑠偉にあやかり、「父はサッカーをやってほしかったと思います」とのこと。だが、小学校で出会った野球にのめり込んだ。
ジャイアンツ・ジュニアに名を連ねると、中学では東村山シニアでプレーした。少年野球の現場ではその当時、足の速い子どもならほぼ機械的に左打ちにさせる傾向が強かったが、オコエは小、中学時代ともに、左打ちを勧められることはなかったという。これは、右の強打者がノドから手が出るほどほしいNPBのニーズにもかなう。
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