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夏の甲子園大会期間中に7球団10人のスカウトが集結 花園大・藤原聡大は「もうドラフト上位じゃないと獲れない」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【投球スタイルは右の金丸夢斗】

「春が終わってから、2カ月くらい積み重ねてきたものが、徐々に表われてきました。どうしてもプロの世界で野球をやりたいと腹を決めたんです。ここで妥協してしまったら、プロでやっていけるわけがないので」

 試合後、藤原は涼しげな表情でそう語っている。6月に155キロを出した時の感覚と比べても、「絶対に今のほうがいい」と断言する。

 藤原の投球スタイルは、「右の金丸夢斗(中日)」と言えるかもしれない。身長177センチ、体重75キロと、野球選手としては華奢な体格。力感がなく、バランスのいい投球フォーム。重力に逆らうかのように、捕手のミットを突き上げる好球質。とくにリリースの瞬間に全身のエネルギーを集約する能力は、金丸と共通している。

 関西大時代の金丸は、「手のひらの中心から指先が始まっているイメージ」と語るなど、その投球感覚も独特だった。その点は、藤原も共通していた。

「投げる時は、お腹のフロントが利くことを意識しています。腸腰筋(ちょうようきん)、膝の裏の神経をしっかりと感じながら、腹筋をズラした状態で腕を振るイメージです」

 そう語った後、藤原は「言葉にするのって難しいですね」と苦笑した。こちらは藤原が何を言っているのか、半分も理解できなかった。

 とはいえ、藤原が自分の身体と向き合い、コツコツと取り組んできたことは十分に伝わってきた。藤原は言う。

「小さなことを積み重ねる力は、一番自信があります」

 藤原がこだわってきたのは、腸腰筋、小殿筋といった深層部の筋肉の使い方である。目に見えない、意識を向けにくい部分にフォーカスしてきた。

【50メートル6秒1の身体能力】

 藤原の登板前に、こんなシーンが見られた。グラウンド整備中、藤原は三塁側ブルペンから左翼の人工芝に向かって、猛然と全力疾走をしたのだ。一歩目からトップスピードに乗るようなダッシュに、目を奪われた。

「50メートルくらいダッシュすると、お腹が乗った状態がつくれるんです。『お腹に力を入れる』という感覚でもなくて、勝手に入る感じ。いい形でマウンドに上がれるので、ダッシュをしています」

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