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【夏の甲子園2025】名門対決で異彩を放った4本の木製バット 花巻東と智辯和歌山のそれぞれの狙いと戦略とは? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【極太バットのメリット】

 右打者の大谷は、昨夏から極太バットを使い始めた。グリップから拳ひとつ分空けて握り、バットを右肩に置いて構える。ノーステップ打法で呼び込み、コツンとぶつけるようにとらえる。特殊なバットの扱い方について、大谷はこう証言する。

「足を上げると、タイミングを外されてしまう可能性があるので、それをなくしたいんです。バットを肩に担いだ状態で振り出すことで、芯でとらえる確率が上がる感覚があります。しっかりミートして、長打ではなくヒットを打つイメージです。最初は太いし、重くて違和感がありましたけど、慣れたら問題ないです」

 花巻東戦では、大谷は1回表の攻撃で犠打を決めている。バントで打球の勢いを殺しやすいのも、このバットを使うメリットだという。

 左打者の黒川もまた、存在感を見せた。第1打席で花巻東の好左腕・萬谷堅心(2年)の外角に逃げていくスライダーをとらえる。やや詰まったハーフライナーは三塁手の頭上に飛び、グラブを弾いて左翼前に弾んだ。黒川からすると、狙いどおりの一打だった。

「レフト前に打つのは自分のスタイルです。ちょっと体を前に出されたけど、ギリギリ残してうまく運べました。バットの重さがなければ、サードに捕られていたと思います」

 なお、大谷より100グラム重いバットを使う理由を聞くと、黒川はこう答えた。

「もともとは同じバットを使っていたんですけど、慣れてきたら手で操作することが増えてきたんです。なるべく体全身で振れるようにしたいので、100グラム重くして手で操作しないようにしました」

 花巻東の佐々木監督は智辯和歌山の木製バットの使い方について、こんな感想を漏らしている。

「私は今まで、木製バットは芯に当たらないと飛ばなくて、打ち損じがヒットになる可能性は金属バットのほうが高いと思っていました。でも、智辯和歌山さんの『グシャッ』という当たりがヒットになるのを見て、『イヤだな』と感じました。今日の試合で勉強させられましたね」

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