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甲子園に届かなかった「九州の怪童」 最速153キロ右腕、延岡学園・藤川敦也の「まだ終わらない物語」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 さらに聖心ウルスラ学園聡明中の監督時代には、今やドラフト候補になった森陽樹(大阪桐蔭)を指導している。森と藤川を比較してもらうと、石田監督はこう答えた。

「森は中学生の頃は、キレのあるストレートを投げていました。藤川はどちらかと言うと、重くて強いボールを投げるタイプ。それぞれにボールの質が違いますね」

 捕手の牛島は小学校(穂波ブルースカイ)、中学(ヤング北九ベースボールクラブ)、高校と藤川とバッテリーを組み続けてきた。牛島は藤川の球を受けられたことについて、「幸せでした」と総括した。

「小学生の頃から、『県大会にいいピッチャーが出る』と聞いても、実際に見てみたら藤川のほうがよくて。いつもレベルが違っていました。藤川のボールって、めちゃくちゃ伸びて、ドーンってくるっすよ。ピンチになるとギアが上がって、変化球まで速くなるんです。自分は性格的にイケイケなので、ピンチでもインコースを攻めたいんですけど、藤川はしっかりと投げてくれる。信頼しています」

 どちらかといえば、牛島が主導してきたふたりの関係性。高校で道が分かれることになりそうだが、心配はないのか。そう尋ねると、牛島は快活に笑い飛ばした。

「大丈夫っしょ! あいつならやってくれるっす」

 今後の希望進路を聞くと、藤川は淀みなく答えた。

「プロに行って、活躍して、メジャーに行くのが最終目標です。いずれはメジャーでプレーするために、一から全力でやっていきます。やらなきゃいけないことは、たくさんあるので。変化球の精度、球種の数、球速、1球1球の質。全部を上げていかないといけないと思います」

 藤川敦也の高校野球は終わった。だが、怪童の野球人生には、まだまだ開かれていないページがたくさん残っている。

 次のページには、何が描かれているのか。それは、野球ファンや寄り添ってきた人間の希望でもある。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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