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甲子園に届かなかった「九州の怪童」 最速153キロ右腕、延岡学園・藤川敦也の「まだ終わらない物語」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【ドラフト候補との対決には完敗】

 そして、要所でギアを入れ替えられるのも、藤川の魅力だろう。富島には、岡村了介という大黒柱がいる。強肩強打の捕手ながら、俊足も武器にする。スカウト陣からも注目されるドラフト候補だ。

 岡村が打席に入ると、藤川の球速は一段と増した。捕手の牛島虎太郎は「ちょっと燃えていましたね」と証言する。藤川としても、岡村を抑えたい理由があった。

「いいバッターですし、甘く入ったらホームランを打たれる。強いボールを投げようと思って、投げていました」

 しかし、結果的にこの日の勝負は岡村の完勝だった。第1打席は、145キロのストレートをとらえられて左前安打。第2打席は118キロのカーブを豪快に弾き返され、中堅越えの適時二塁打。第3打席は右前打、第4打席は前述のとおり四球を与えている。全打席出塁されただけでなく、2盗塁を許した。

 リードする牛島は、こんな後悔を口にする。

「今日はカーブとスライダーしか使わなかったんですけど、岡村にはフォークも使えばよかったです。藤川のフォークは140キロくらい球速が出て、ストレートの軌道から落ちる。2ストライクに追い込んでから、使うべきでした」

 藤川を評する際、いつも枕詞のように使われるのが「ポテンシャルが高い」というフレーズだ。将来、さらに才能を花開かせる可能性は十分にある。だが、藤川本人の自己評価はさほど高くない。

「昔から持っているものは周りより優れていると言われてきましたけど、もっとすごい人はいるし、足りないところはまだまだあります。石垣(元気/健大高崎3年)とか、関東や関西のピッチャーは、球速は150キロを超えるし、いい変化球があって、コントロールもいい。自分より大人のピッチングをしていると感じます。見習うべきところは、いっぱいあります」

【大阪桐蔭・森陽樹との違い】

 今春に延岡学園の監督に就任した石田敏英監督は、藤川の潜在能力について「すごく高いと思います」と語る。石田監督は聖心ウルスラ学園の監督時代に、控え内野手だった田原誠次(元・巨人)の投手転向を後押しし、無名だった戸郷翔征(巨人)をスカウトしている。

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