【高校野球】「日本に来てよかった」甲子園を目指すドミニカ人留学生と森繁和の知られざる育成ストーリー (2ページ目)
【ドミニカの教育事情】
日本で高校3年間を過ごした者は、国籍にかかわらずNPBのドラフト会議で指名対象になる。エミールもユニオールもプロ志望を公言しており、今夏の結果は彼らの野球人生を大きく左右するかもしれない。とくに身体能力が高く、高校通算20本塁打と長打力を武器にするエミールは注目度が高い。熱心に通うプロスカウトもいるという。
森は眼下で繰り広げられる戦いを見守りながら、ドミニカの実情について語り始めた。
「ドミニカは都市部から離れると、裕福な家庭は別として、ちゃんとした教育を受けられる子が少ないんだよ。でも野球は盛んだし、ビジネスになるかもしれないから続ける子が多い。でも、そんな子たちが野球で生活できないとなったら、どうなるか。
親の仕事の手伝いをできる子は、まだいい。野球をやめたら普通の仕事は何もできない、という子はどうなると思う? どんどん悪い道へと流れていってしまうんだよ。ドミニカの関係者からも『何とかしてくれないか?』と言われていたんだ」
そこで、森は留学制度を使ってドミニカ人を日本に受け入れ、教育を受けさせることはできないかと考えた。ただし、そのためには「実績」が必要だった。
「ドミニカの人からしたら、日本なんて国を知らないんだよ。15歳くらいの子どもが、突然『知らない異国へ行け』なんて言われても、なかなか難しいじゃない。それで、中日時代に一緒にやっていた連中がちょうど親の年代になっていて。あいつらは日本を知っているから、息子を留学させることに抵抗がないからね」
中日時代の教え子の子どもが、日本に留学生としてやってくるようになった。エミールの2学年下には、リカルド・ペレスというドミニカ人留学生もいる。父は2015年から2年間、中日でプレーしたリカルド・ナニータである。
森は中日コーチ時代からドミニカ人のポテンシャルに注目してきたが、今もその思いは揺らいでいないという。
「15歳くらいの年代なら、ドミニカ人より日本人のほうがずっとうまいと思う。でも、1〜2年もかけてトレーニングや教育をしていくと、ドミニカ人は一気に追い抜いてしまう。日本で野球をしながら勉強ができれば、引退後に悪さに走るような子も減ると思うんだ」
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