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ドラフト指名漏れから2年 セガサミー・尾﨑完太が新球をマスターして再浮上!「プライドなんて全然ない」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【あとはメンタルだけ】

 そのチェンジアップは、侍ジャパンU−23代表選考合宿に招集された際に西濃運輸の吉田聖弥(現・中日)から教わったものが原型になっている。年齢的には吉田のほうが年下だが、尾﨑は自分から進んで教わりにいったという。

「向こうのほうが一枚も二枚も上手なので。キャッチボールをひと目見て、これはすごいと思って話を聞きにいきました。チェンジアップの投げ方、スライダーの精度、体重移動の仕方、試合前のアップのやり方、なんでも聞きました」

 法政大という名門でプレーしてきたプライドもあったのではないか。そう尋ねると、尾﨑は「プライドなんて全然ないです」と笑い飛ばした。尾﨑は自分が前進するために、貪欲に技術を身につけようとしている。

 セガサミーの吉井憲治ヘッドコーチは、尾﨑について「プロに行けるだけのものは持っているので、あとはメンタルだけです」と断言する。

「今年はスローペースの調整ですけど、順調にきています。変化球はチェンジアップを投げられるようになったし、精度は去年より上がっています。今は毎日投げ込んでいるんですよ。あとは都市対抗に合わせて、状態を上げていけたら楽しみですね」

 まだシーズンは始まったばかり。これから尾﨑がフルスロットルの投球を見せられれば、自ずとスカウトからの評価は上がるだろう。

 最後に尾﨑に聞いてみた。今の自分は、法政大4年春のいい状態に戻ってきた感覚なのか。それとも、新たな自分をつくり上げてきた感覚なのか。尾崎は少し考えてから、こう答えた。

「うーん、戻ってきていると感じる反面、新しい自分をつくってきている感じもあります。4年春は勝手に結果が出てしまった、というところもありました。あのままプロに行けたとしても、苦しんでいたかもしれないですし。今は1球1球、考えて組み立てられるようになりました。自分自身、成長していると感じます」

 再びドラフト戦線へ。稀代のサウスポーは、その時に備えて着々と力を蓄えている。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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