【選抜高校野球】「第二の大谷翔平を目指す」怪物は194センチ、98キロ 山梨学院・菰田陽生の挑戦 (2ページ目)
小学2年の時点で、兄の身長を抜いていたという。それでも、菰田の動きに大型選手特有の鈍重さがないのは、俊敏な兄と過ごした幼少期があったからなのかもしれない。弟の50メートル走のタイムは6秒4である。
「体つきは真逆なんですけど、自分はお兄ちゃんの足りないものも持っていると思います。だからお兄ちゃんが持っている足の速さとか、自分も持てるようになったらいいと考えています」
【甲子園デビューは緊張との戦い】
3月20日、菰田は「3番・一塁手」として、初めて甲子園の土を踏んだ。
昨秋までは投手メインだったが、打撃力を見込まれて冬場に一塁守備を練習してきた。だが、「初めての甲子園で緊張してしまって」という菰田は、シートノック中に2球連続でトンネルと盛大な失態を犯してしまう。
試合が始まっても、緊張は解けなかった。高めに抜けたボール球に対して「振りたい思いが強すぎて」とハーフスイングで空振り三振。2打席目は外角のスライダーに手を出し、またもや空振り三振に倒れた。
ここで菰田に救いの手が差しのべられる。ベンチで吉田健人部長から「体が突っ込んでいるぞ」とアドバイスを受けた。菰田は「部長から言葉をかけてもらって、緊張がほぐれました」と振り返る。
3打席目に立った菰田は、本来の伸びやかなスイングを取り戻していた。しっかりととらえた打球は右中間に飛び、右翼手がファンブルする間に二塁を陥れた。
結果以上に、菰田のフルスイングには見る者の胸を躍らせるエネルギーを感じた。ステイバックでボールを呼び込み、豪快なフォロースルーで振り抜く。まともに当たったらどこまで飛ぶのか。そのスケール感がたまらなかった。
その後も、詰まりながら三遊間を球足の速いゴロで抜くヒットを放つなど、終わってみれば5打数2安打。チームも奈良の名門・天理に5対1で勝利した。
試合後、菰田はホッとした様子でこう語った。
「最初の2打席は中途半端だったんですけど、まずしっかりと振ることが大事だと感じています。当てにいくスイングでは飛ばないので」
高校入学から1年間で放った本塁打数は6本。その本数はこれから自然と増えていくに違いない。菰田によると、練習では山梨学院のグラウンドに建つ高いフェンスを越え、道路に飛び出す推定130〜140メートル級の脅弾も放っているという。
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