「奇跡の12人」から始まったKBCの10年 「午後2時から野球を始められます」を武器に沖縄の強豪校へ (2ページ目)
経営関係の仕事をしたあと、いよいよ夢に踏み出すべく沖縄県で高校の教員試験を受けたが、高い倍率に跳ね返される。それでも学校関係の仕事に就きたいと考え、KBCの商業科教員に応募した。
「KBCにも高校ができたので、野球部を始められるのではと思ったんです。プレゼンをさせてもらい、野球部を立ち上げましょうとアピールしました」
当時、KBCに在籍する高校生は40〜50人。通信制と全日制の混在する学校だった。
1年後の2015年に野球部を発足させる際、通信制と全日制のどちらがいいか。通信制なら月1回登校すれば、高卒の資格を得られる。2012年に長野県の地球環境高校が通信制では初のセンバツ出場を果たして話題になったが、月1回のスクーリングでは少ない。それより全日制の総合学科にスポーツコースを立ち上げたほうが、KBCの特色を生かせるのではと神山は考えた。
「KBCはもともと専門学校なので、資格取得のノウハウは大量にあったんです。野球は午後からしっかりできるようにしつつ、県立高校にはできない、私立の特色をミックスすれば面白いのではと総合学科で立ち上げました」
【午後2時から野球に励める強み】
プレゼンの結果、学校からスポーツコースと野球部創設の了承が得られた。次は生徒集めだ。当然、うまく行くはずがない。
「ん? どこにあるの?」
中学校を回っても足蹴にされた。耳を傾けてくれる人に、自分たちの強みを訴えるしかなかった。
「午後2時から野球をできます。私立は文部科学省から認められ、体育の授業を野球に置き換えるなど、特色あるカリキュラムをつくれるんです」
神山自身は高校時代、野球に多くの時間を費やせるライバル校をうらやましく思っていた。2時から部活に励めることは、野球少年たちへのアピールポイントになるはずだ。
「学校に行かないんでしょ? 通信制でしょ?」
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