沖縄の高校野球が抱える県外流出問題に沖縄尚学・比嘉監督は「本音は残ってほしいなと思うけど...」 (3ページ目)
だが、比嘉監督は「その数字だけが先行している」と語る。
「速いと言えば速いけど、何とかなるボールだと思います。今はただ『ブン!』って投げているので、バッターは『このくらいのボールが来そう』と読めると思う。本人的にも、空振りがとれていないのは自覚しています」
ラプソードでストレートを測ると、回転軸が10時の方向に傾いている。回転効率を高めるには、12時に近づけたほうがいい。末吉は腕の位置をトレーナーと試行錯誤しているが、比嘉監督は「しばらく見守る」という姿勢を貫いてきた。高校生には成長の波があり、現状の末吉は「停滞期」のなかで必死にもがいているように映るからだ。
「本人が『変わりたい、変わっていきたい』っていうのは伝わってきます。でも、変えなくていい部分もあると思うけど、人生って難しいじゃないですか。主体性が大事だけど、高校生たちには『とりあえず、これやっておいて』という強制の部分も必要だと思うんですね。でも、それをやりすぎて、『どうせ自分が考えたことは否定されて、これをさせられている』という印象にもなってほしくない。ちょうどいい、中間が難しいです」
【多くのプロ選手を輩出】
沖縄の野球少年たちは、なぜ沖尚に憧れるのか。大きな理由のひとつは、選手が育っているからだろう。現役では東浜をはじめ、嶺井博希、リチャード(ともにソフトバンク)、與座海人(西武)、岡留英貴(阪神)らがプロの世界に羽ばたいている。
2008年には、那覇市内の学校から車で約20分の八重瀬町に『尚学ボールパーク』が完成。以前は学校の狭いグラウンドで練習していたが、恵まれた環境で取り組めるようになった。
文武両道を掲げる進学校というブランドイメージもあり、県内で沖尚の人気は根強い。それでも、有望な中学生の県外流出は増えるばかりだ。比嘉監督がその傾向を強く感じ始めたのは15年ほど前だった。
「興南の島袋洋奨たちが春夏連覇したあとから、県外に進む中学生が一気に増えたような印象があって......それまでもいたとは思うけど、『なんか、あれ?』みたいな感じですね。沖縄が注目されたのもあると思います」
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