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沖縄の高校野球が抱える県外流出問題に沖縄尚学・比嘉監督は「本音は残ってほしいなと思うけど...」 (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 2008年春に沖縄尚学が9年ぶりのセンバツ優勝を飾ると、同年夏には現エナジックスポーツの神谷監督率いる浦添商業がベスト4進出。そして2010年には興南が春夏連覇を達成した。

 沖縄の子は運動能力に優れている──。

 巷でよく言われ、そう明言する学者もいる。県内出身の比嘉監督は懐疑的だが、プロ野球に目を向ければ山川穂高(ソフトバンク)や平良海馬(西武)、宮城大弥(オリックス)らが球界を代表する選手に成り上がった。

 反面、興南が2010年に春夏連覇を達成して以降、甲子園ではどこもベスト8の先に進めていない。2023年夏、優勝した慶應義塾に準々決勝で敗れた沖縄尚学の比嘉監督は吐露する。

「県全体のレベルが落ちている感じは正直します。東浜とか島袋がいた時の5年間ぐらいって、沖縄県は強かったと思います。県外に出ているのを言い訳にしたくないですけど、ちょっと落ちているのかなと思いますね」

 今や越境入学は当たり前だ。沖縄に限った話ではない。野球留学の是非は賛否両論あるなか、比嘉監督は複雑な思いを抱いている。

「本音は残ってほしいなと思うけど、進路選択はその子の自由なんで......。もっと言うと、僕ができたかっていうと、できないんで。本島に残ることはできたとしても、外に出て勝負しようなんて思わないし。出ていく子たちはそれなりの覚悟を持って行っていると思うので、それはすごいなと感じます。ただ本音としては、この小さい島に残ってやりたいなと思いますけどね」

 本州の最南・鹿児島県から約660キロ。沖縄はその文化だけでなく、野球の環境も独特だ。

 12月でも20度に達する日もあるくらい温暖で、キャンプ地に選ぶプロ球団が増えている。その恩恵で設備も整えられたことが、選手輩出につながっているという見方もある。だが冬の間は芝生の養生のため、球場を借りるのは難しい。

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