沖縄の高校野球が抱える県外流出問題に沖縄尚学・比嘉監督は「本音は残ってほしいなと思うけど...」
群雄割拠〜沖縄高校野球の現在地(2)
県内屈指の人気校・沖縄尚学(前編)
1月24日に発表された2025年のセンバツ出場校で、九州王者・沖縄尚学も順当に選出された。
「やっぱり沖尚(おきしょう)っていうブランドがあります。2024年に入学した1年生(新2年生)のピッチャーも、沖縄県のトップ5がみんな行っています。2年生(=新3年生)の野手にもすごい連中がいる」
そう話したのは、九州大会準優勝校で同じくセンバツ出場を果たしたエナジックスポーツの神谷嘉宗監督だ。
昨年夏、そのエナジックスポーツをはじめ、KBC、日本ウェルネス沖縄というカタカナ、アルファベット表記の高校が大躍進し、「沖縄高校球界の異変」という切り口の記事があふれた。
だが結局、頂点を極めたのは老将・我喜屋優の率いる興南だった。県内最多の14回目となる甲子園に駒を進めている。
一方、沖尚は夏の3回戦でエナジックスポーツにコールド負けを喫したが、秋は県大会、九州大会ともに決勝で同校に雪辱を果たした。
はたして、沖縄球界に変化は生じているのか。昨年末、沖尚の比嘉公也監督に尋ねると、真っ先に口にしたのは、ある違和感だった。
選手としても監督としても甲子園で優勝経験がある沖縄尚学・比嘉公也監督 photo by Nakajima Daisukeこの記事に関連する写真を見る
【伝統校って呼ばれることに違和感】
「なぜか知らないけど、急に僕らが『伝統校』って言われるようになったと感じています。新鋭校という表現に対する、たとえだと思うんですけど......伝統校なのかな?」
沖縄には、もっと由緒ある高校がある。1999年春、沖尚の背番号1をつけて県勢初の甲子園優勝を果たした比嘉監督はそう感じている。
「僕らが学生の頃って、沖縄水産がブランドでした。僕の1個上が新垣渚(元ソフトバンクなど)さんの時で、本当に強かったんですよ」
当時、沖縄の高校野球をリードしていたのは、栽弘義監督の沖水(おきすい)だった。1990年夏に甲子園で県勢初の決勝に進出し、翌年夏も決勝進出を果たすなど、「沖縄高校野球の水準を飛躍的に高めた名将」と名を残している。
それから数十年が経ち、高校野球は全国的に私立優位だ。沖縄も例に漏れない。
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著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。