創部わずか3年でセンバツ甲子園 エナジックスポーツが実践する「ノーサイン野球」の正体とは? (4ページ目)
さらに言えば、攻めるだけではない。神谷監督が続ける。
「そういう野球をやれば、もちろんピッチャーも鍛えられます。相手との駆け引きがずっとあるので。ノーサイン野球は攻撃に特化されがちだけど、点を取られないための守備も、相手との駆け引きのなかで訓練していかないといけない」
エナジックスポーツは、野球部の目的に「人間形成」を掲げている。ノーサイン野球は勝つためにたどり着いた戦法だが、部の目的にも通じている。早起きして勉強に励み、自分たちならではの文武両道を追求するのも、同じゴールを目指してのことだ。
なぜ、体育科体育コースの高校生にも勉強を頑張らせるのか。その裏には野球部を率い、同時に教員でもある神谷監督の信念がある。
「プロ野球選手になって引退したあと、路頭に迷って苦労しているというテレビ番組があるじゃないですか。そういう生き方にはなってほしくない。潰しが利く人生。生きる力を身につけるのは、高校しかないと思っています。私の教え子はみんな、その力を持って卒業したと自負しているんですね。確かにうまくいかなった子もいるかもしれない。だけど私としては、そういう教育をやってきたつもりです」
69歳のベテラン監督が率いる、創部3年目のエナジックスポーツ。「疾風迅雷」というモットーを掲げるチームは、初の甲子園でどんな姿を見せるのか。
高校野球ファンの興味・関心を呼んできた新鋭が、一気に話題をさらっても不思議ではない。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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