【夏の甲子園2024】興南の1年生捕手・丹羽蓮太が浴びた大阪桐蔭の洗礼 「雰囲気が違う。怖さがあった」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 3回裏、大阪桐蔭の先頭打者・岡江伸英がライト前ヒットで出塁すると、風向きは一変する。送りバントを試みた山路朝大はスライダーで空振り三振に仕留めたものの、投手の中野大虎には四球を与えてしまう。丹羽は田崎に対して「少し力が入っているな」と感じたという。

 一死一、二塁から1番打者の吉田翔輝に右中間を割られる2点タイムリー三塁打を浴び、さらに2番の宮本楽久にはセンター前に弾き返される。4回裏にも3安打1四球を与えて2失点。スコアは0対5となり、大勢は決した。

【大阪桐蔭と興南では選手層が違う】

 試合後、丹羽のもとを訪ねると、止まらない涙を拭いながら取材に応じてくれた。

「ずっと憧れていた舞台で試合ができて楽しかったんですけど、勝てると思っていた相手だったので悔しくて......。自分はキャッチャーで、主軸として使ってもらったのに、結果が出なかったので」

 試合を終えて、丹羽は自身の力不足を実感した。それは技術面だけではない。

「大阪桐蔭の選手は『雰囲気が違う』と、ものすごく感じました。声のかけ方ひとつとっても、戦う気持ちが前面に出ていて、怖さややりにくさを感じました。自分はキャッチャーとして、もっとどっしりと構えていれば、田崎さんも投げやすかったと思うんです。ピッチャーを乗せることができなかった」

 丹羽は大阪桐蔭戦を通して、コーチからかけられたある言葉を思い出していた。

「おまえがもっとピッチャーを乗せていけ。1年生とか関係ないし、どんどん指示していいんだから」

 言葉の主は島袋洋奨コーチだった。2010年に興南が甲子園春夏連覇を成し遂げた際のエースである。

 丹羽は、自分のふがいなさを痛感した。「1年生捕手」とフィーチャーされることも、本人にとってはどうでもいいことだった。

「試合に出たら1年も2年も3年も関係ないので。1年生だからといって、ミスをしてもオーケーというわけではないです」

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