学法石川の「三刀流+α」大栄利哉が苦難を乗り越えスケールアップ 打倒・聖光学院、甲子園春夏連続出場を誓う (2ページ目)
それまでキャッチャーひと筋だったのは、6歳上の兄・陽斗の影響が大きい。
佐々木が仙台育英の監督を退任する2017年に指導を受け、18年と19年に甲子園のマウンドに立っている兄と、上のステージでバッテリーを組むことを目標としていた。ピッチャーに挑戦することを伝えた際にも、「おまえはいつか俺とバッテリーを組むんだから、キャッチャーのままでいいよ」と言われたという。それでも「決めたからにはやりたい」と伝えると、「じゃあ、頑張って腕を振れ!」と後押ししてくれたのだという。
昨秋、大栄は兄の激励に従い、目一杯、腕を振った。公式戦初登板となった県大会準決勝の聖光学院戦で2イニングを投げ、1奪三振、ノーヒットと上々のデビューを飾る。そして、翌日の東日大昌平との3位決定戦では先発し、7回途中2失点と好投。チームの東北大会出場に貢献したのである。
【センバツでの1打席】
東北大会で背番号2のピッチャー・大栄は、ますます強烈な印象を与えていく。盛岡中央(岩手)との初戦は救援登板、聖和学園(宮城)との2回戦は先発し、ピッチャー→ファースト→ピッチャーと立ち回った。吉田輝星の弟・大輝とも投げ合った金足農(秋田)との準々決勝では1失点の完投と、エースの如くマウンドに君臨したのである。
ピッチャーを本格的に始めてから3カ月。まだ急造の域から脱しきれておらず、なによりこの段階での大栄は最速143キロとスライダーしか持ち球がなかった。にもかかわらず、これだけのパフォーマンスを発揮できたひとつの要因として、大栄はキャッチャー目線の投球を挙げている。
「プレーヤーとしては『キャッチャーとしての自分が一番』と思っていたので、実際に自分が投げるようになるまではピッチャーの気持ちがわからなくて......。それが、『きつい場面では、初球から厳しいボールを投げるのは不安だな』とか『早めに追い込んでも無理に三振を狙うんじゃなくて、変化球で打ち取る省エネの方法もあるんだな』とか、キャッチャー目線だけじゃなく、客観的にピッチャーの心理を見られるようになったことが大きかったです」
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