大阪桐蔭、履正社の「2強」撃破で大注目! 大阪学院大高のビジネスマン監督が見据える「日本一」への道程 (3ページ目)
一方で、プロ志望の今坂にとっては1試合1試合がスカウト陣へのアピールの場にもなる。近畿大会では糸を引くように伸びていくスローイングが目を引いた。今坂はこの冬に福井耀介コーチと二人三脚で取り組んだ守備練習の効果だと語った。
「前までは捕ってから肩に任せてボールを投げていたのが、最近は『足でボールを投げる』感覚が出てきました。下半身を使って打球を捕って、その流れのままボールを投げる。今日はそれがとくにできました」
高校球界に好遊撃手が多い今年、今坂はどんな評価を勝ち取るだろうか。
最後に、どうしても辻盛監督に聞きたいことがあった。それは「春の大阪王者になったことで、逆に夏の大会が戦いづらくなったのではないか?」ということだ。
春の大阪を制したからといって、夏の大会を勝ち上がれる保証はない。大阪桐蔭、履正社も同じ相手に続けて負けるわけにはいかないはずで、どのチームも春の王者を倒そうと牙をむくはずだ。いくら新戦力が出てきても、チームが受け身に回ってしまう可能性もあるだろう。
質問を受けて、辻盛監督は表情を変えずにこう答えた。
「たしかに戦いにくいですけど、それで負けているチームじゃダメなので。戦いにくくなって、逆によかったと思います。今年のチームだけ勝てればいいのでなく、ずっと強いチームでい続けなければいけません。そのためには『強い』と思われた状態で勝てなければ意味がありません。だからマークされたほうが僕はいいです」
須磨翔風に敗れた経験も、大阪学院大高にとってはこの夏、さらには恒常的な強さを手に入れるための大きな糧になるはずだ。
これから大阪学院大高がどんな組織になっていくのか、ますます目が離せなくなってきた。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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