社会人入団後に大化けしたふたりの遅咲き投手 シーズン本格スタートでスカウトたちに猛アピール中 (3ページ目)
投げ合ったトヨタ自動車のエース・嘉陽宗一郎は9回を1失点で完投する、貫禄の投球だった。結果的に大会のMVP(橋戸賞)を受賞することになる大投手の投球を見て、岡野は強く感じるところがあったという。
「再現力が高いなと感じました。ポンポンとストライクが入って、いいピッチャーの理想像だなと。僕にはない要素だと感じました」
プロへの思いを聞くと、岡野は「あまり考えていないんです」と答えた。それは、決してプロを目指していないという意味ではない。
「目の前の1試合、1試合で結果を残すだけですから。まずは社会人でバリバリ投げないことには、高いレベルで通用しないと感じています。自分自身、まだ伸びしろはあると思っているので、まずはチーム内で技術を持っている福島(由登)さん、東野(龍二)さんたちから学んで、もっと結果を残せるようにしたいですね」
予選リーグ3戦目・日立製作所戦に先発した岡野は、課題にしていた立ち上がりで粘りの投球を披露。7回まで8奪三振、無失点と好投を見せた。だが、8回の守備中に一塁ベースカバーに入った際、右足首を強くひねるアクシデントで降板。チームは勝利したものの、岡野は試合後に松葉杖姿の痛々しい姿で現れた。今後に向けて、まずは5月下旬から開かれる都市対抗二次予選までに回復できるかがカギになりそうだ。
7月に開催される都市対抗本戦に向けて、社会人野球は熱を帯びていく。負けられない戦いのなかで、プロスカウトの熱視線を浴びる猛者がきっと現れるはずだ。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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