常廣羽也斗と下村海翔を手懐けた人間力 青学大・渡部海は2年後のドラフトを賑わせる逸材 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 最初に常廣の「渡部評」を伝えると、渡部は照れ臭そうに笑って語り始めた。

「メンタルの上下動をなくすようにしたのは、高校の時からですね。『キャッチャーは気持ちに波をつくってはいけない』という監督の教えで、試合中も練習中も波をつくらないことを意識してきました」

 渡部の言う「監督」とは、智辯和歌山の中谷仁監督である。現役時代は1997年夏に智辯和歌山の全国制覇に貢献し、同年ドラフト1位指名を受けて阪神に入団。その後は楽天、巨人と渡り歩き、15年間プレーした元プロ捕手である。

 中学時代に大阪・住吉ボーイズで侍ジャパンU−15代表に選ばれるほどの捕手だった渡部が智辯和歌山に進学したのも、「中谷監督に教わりたい」という一心からだった。

 渡部は高校2年夏の甲子園で、正捕手として全国制覇を経験。3年時には侍ジャパンU−18代表に選出されている。

 おそらくプロ志望届を提出すれば、ドラフト指名はあったはずだ。それでも、渡部は青山学院大への進学を決める。

「進路を決める時、今すぐプロに行けたとしても厳しいと監督とも話していました。肩はそんなに強いわけじゃないし、打撃もそこまで飛ばすわけじゃない。大学で自分の武器を見つけて、プロに入ってすぐ活躍できる選手になったほうがいいと思いました」

 渡部の言葉を鵜呑みにすると、誤解する読者もいるかもしれない。肩や打撃の自己評価に関しては、あくまでも「プロレベルでは」ととらえてもらいたい。

【重視するのはブルペンでの対話】

 渡部は大学に入学してすぐ、正捕手の座をつかむことになる。だが、想像してみてほしい。3学年上の投手陣には常廣や下村といったドラフト候補の大先輩がいるのだ。とくに常廣など人間的につかみどころがなく、一見とっつきにくい印象を持たれがち。並の神経ならば「どんな話をすればいいのだろう?」と気後れしても不思議ではない。

 だが、渡部はこともなげに「自分としてはやりやすかった」と振り返るのだ。

「たしかに常廣さんは独特で自分の世界を持っている人で、周りから見ると難しそうに思うかもしれません。でも、常廣さんは自分の意見も取り入れてくれるので、やりやすかったですよ」

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