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健大高崎が春夏通じて初の全国制覇 準決勝まで打率.071の森山竜之輔が「半足分」のスペースをつくって好投手攻略の大仕事 (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka

 そして、その裏。健大高崎は二死一、二塁で準決勝まで14打数1安打(打率.071)の5番・森山が打席に入る。今朝丸が投じたのは初球、インコースのストレートだった。

 報徳学園バッテリーにとって、今大会の生命線となっていたのがこの球。今朝丸が準々決勝で大阪桐蔭を5安打1失点に抑えたのは徹底したインコース攻めが功を奏しての結果だった。もちろん、このデータは健大高崎にも入っている。試合前のミーティングでは「投球の割合はストレートが多い。ストレート狙い」という話があった。森山は言う。

「初球、インコースを狙ってました」

 そのために、工夫もしていた。準決勝までとは打席での立ち位置を変えていたのだ。

「インコースを突いてくるピッチャーなので、(バッターボックスのラインから)半足あけて踏み込んで打とうと思っていました」

 準決勝までは本塁ベース寄りのラインぎりぎりに立っていたが、それを変更。内角が窮屈にならないよう、半足分のスペースをつくった。不振のため、前の試合からはバットを指一本分短く持ち、コンパクトに振る意識もあった。

 そして初球、森山は狙いどおりのインコースのストレートを逃さなかった。完璧にとらえた打球は、低反発バットを感じさせない鋭い当たりとなって左中間を深々と破る。二者を還す同点の二塁打。地元の報徳学園が初回に先制し、盛り上がるスタンドに押されそうな流れを止める大きな一打になった。

「攻めた結果です。インコースを張られているのは感じました。構えたところより少し内に来ました。甘くない球でしたけど、ボールの質かなと思います」(捕手の徳田拓朗)

 芯に当たらないと飛ばない低反発バットでもあり、ベース寄りぎりぎりに立っていれば詰まったと思われる球。構えよりやや中に入ったこと、さらに半足あけた分、芯に当たるコースになった。

【同点ではなく逆転を狙った】

 一方の報徳学園にも不振の選手のところにチャンスが来た。6回表、先頭の安井康起が二塁打で出ると、山岡純平の送りバントはライン際に転がり内野安打となって無死一、三塁。さらに相手投手の暴投で無死二、三塁になった。

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