健大高崎が春夏通じて初の全国制覇 準決勝まで打率.071の森山竜之輔が「半足分」のスペースをつくって好投手攻略の大仕事 (3ページ目)
ここで打席に入ったのは7番の徳田。第1打席でライト前ヒットを放ったが、準決勝まで13打数1安打(打率.077)と当たっていない打者だ。徳田はストライクを2球見送ったあと、1−2から外のスライダーで三振。つづく辻本侑弥は準決勝の中央学院戦で勝ち越しタイムリーはあったものの、15打数2安打(打率.133)。前の打席でも三振に倒れていた。辻本への初球がワンバウンドのボールになったところで、大角監督は背番号20の田村惺(せい)を伝令に送る。
「内野は前進守備をしている。大振りにならず、ミートしたらヒットになる。力まず、楽しめ」
だが、辻本は三塁ゴロ。9番の今朝丸も三振に終わり、絶好の得点機を生かせなかった。大角監督は言う。
「小技で1点取る? めちゃくちゃ考えました。ただ、(健大高崎に)まだ2、3点いかれそうな感じがあったので、逆転まで欲張ってしまいました」
今大会の今朝丸は強打の愛工大名電、大阪桐蔭打線に対し、合計16イニングで許した長打は1本だけ。だが、この試合は序盤3イニングで2本の長打を許していたことで、後半を0点で抑えるイメージができなかった。
9回表は二死一塁から背番号13の西川成久を「アウトになったらオレのせい。行けると思ったら行け」と言って代走に出し、試合終了覚悟の盗塁を成功させて見せ場をつくったが、最後は準決勝まで14打数6安打(打率.429)と当たっていた頼みの1番・橋本友樹が三振に倒れて万事休した。
投手の走塁。
森山の半足。
逆転を狙った采配。
リスクを承知で1点を奪いにいった采配。
さらには、好投の石垣元気に代え、血豆を潰して全力投球はできない佐藤龍月を9回に送った青柳博文監督の投手継投もある。
3対2という点差以上に攻防があった、見ごたえのある決勝戦だった。
著者プロフィール
田尻賢誉 (たじり・まさたか)
1975年、神戸市生まれ。学習院大卒業後、ラジオ局勤務を経てスポーツジャーナリストに。高校野球の徹底した現場取材に定評がある。『明徳義塾・馬淵史郎のセオリー』『弱者でも勝てる高校野球問題集173』(ベースボール・マガジン社刊)ほか著書多数。講演活動を行なっているほか、音声プラットフォームVoicy(田尻賢誉「タジケンの高校野球弱者が勝つJK」/ Voicy - 音声プラットフォーム)でも毎日配信している。
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