「これがプロで活躍する選手だ」学生時代の吉田正尚の技術に驚愕 社会人野球のレジェンドが引退「まさかここまで長く野球をやれるとは」 (2ページ目)

  • 藤井利香●取材・文 text by Fujii Rika

【ギリギリ感がクセになる社会人野球】

ーー野球ひと筋に24年間、お疲れさまでした。

山﨑錬(以下同) ENEOSに入社した時は、まさかここまで長く野球をやれるとは考えもしませんでした。社会人チームは毎年新人が5人前後入り、多い時は10人以上。メンバーは総勢30人ほどなので、その分入れ替わりがある厳しい世界です。僕自身も5、6年目にキャプテンを務めたあと、7年目からはずっと「今年が最後かもしれない」と思いながら野球をやってきました。

ーー「引退」と言われた時の正直な思いは?

 覚悟はしていたものの、平然と受け入れられたわけではありません。当たり前に野球をしてきた毎日がなくなるというのはとても寂しいこと。でも区切りの10年目に都市対抗で優勝でき、さらにもう1年現役を続けて11年もプレーできた。途中勝てない時期もあって山あり谷ありでしたが、学生時代も含めて幸せな野球人生だったと思っています。

インタビューで野球人生を振り返った 撮影/村上庄吾インタビューで野球人生を振り返った 撮影/村上庄吾ーー年間を通して戦うプロ野球と違い、一発勝負の社会人野球。どんなことが印象深いですか?

 社会人野球は「この一瞬」にかけていて、結果を出せなかったり、ケガで出場できなかったらまったくチームに貢献できないことになります。ひとつの勝負に1年かけて向かっていくのでそれぞれの思いが日々積み重なり、本番では一投一打にそれが自然とにじみ出るんです。選手一人ひとりにそこに至るまでのストーリーがあって、だから見る人の心を動かせるようなプレーも生まれるんだと思います。

 ENEOSはそれをとことん突き詰めたチームです。たとえば、昨年のドラフト1位で横浜DeNAベイスターズに入団した度会(隆輝)は、横浜高時代に指名漏れでプロに行けず、いろんな思いを抱えてENEOSにきたと思いますが、チームの勝利に貢献するために持ち味である長打力や勝負強さを磨き、その結果がプロの道へとつながっていきました。そういう仲間の思いも手にとるようにわかるんです。

 個で戦うプロよりも束になって向かっていく結束力が社会人野球のすばらしさで、試合での緊張や緊迫感は半端じゃないけど、むしろこのギリギリの感覚がクセになります。おかげで、普通に過ごしていたら味わえないような興奮や感動を経験できたと感じています。

日々練習に励んだENEOSとどろきグラウンドにて 撮影/村上庄吾日々練習に励んだENEOSとどろきグラウンドにて 撮影/村上庄吾

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る