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屈辱のU−18強化合宿から徳島商・森煌誠が驚きの進化 優勝候補から10奪三振とどう変わったのか (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

【徳島大会はノーシードから優勝】

 投球フォームでは、それまでオーソドックスだった左足の上げ方を高く振り上げるように改良した。

「足を高く上げると体が大きく使えて、腕が振れる感覚があったので。1年生の時はその使い方だったんですけど、いろいろと試すなかで変えていて。合宿のあとに戻しました」

 そして、強化合宿で自分を見失った反省から、投球に対する考え方を変えた。

「三振をとりにいこうとすると力んでしまうので、力を抜いて投げることを意識するようになりました」

 夏の徳島大会は5試合45イニングをひとりで投げ抜き、ノーシードから優勝に導いた。だが、脱力投法の効果を実感する森は「疲れは全然ありません」と胸を張る。大きな故障をしたことがない丈夫な肉体も、森にとって大きな財産になりそうだ。

 報道陣から目標の投手を聞かれた森は、迷わず「山下舜平大さん(オリックス)です」と答えている。

「高校の時から見ていたんですけど、大きなカーブが投げられてちょっと似ているなと」

 福岡大大濠時代の山下が将来を見据えて、ストレートとカーブの2球種しか使わなかったことも知っている。ただし、森の場合は「(球種を)増やしたいんですけど、器用なほうではないので」と事情が異なるようだ。

 特徴的なカーブは小学生時から壁当てで遊ぶなかで、「よく曲がっていた」という感覚が今につながっている。打者の目線を上下に動かす縦割れのカーブは、今後も森の野球人生を支える武器になるはずだ。

【全国制覇経験のある敵将も脱帽】

 そして、愛工大名電戦で試合中盤以降に猛威をふるったのはもうひとつの変化球、スプリットである。捕手の真鍋によると、徳島大会ではそこまで信用していない球種だったという。

「甲子園に来て、めっちゃ落ちるなと思って使いました。今日は3球続けて空振りを取れたんですけど、そんなの初めてで『めっちゃええやん!』と思って。結局1球も打たれませんでした」

 試合後、愛工大名電の倉野光生監督は完敗を認めてこう語った。

「森くんはスキのない本格派のピッチャーでしたね。強いストレートと落ちる変化球があって、変化球は見極めるのも難しいボールでした」

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