オール5の頭脳で高校日本代表候補にも選出 昌平高校の捕手・齋藤陽貴は指揮官が惚れ込んだ逸材 (2ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text & photo by Takagi Yu

【指揮官が惚れ込んだ逸材】

 もともと黒坂監督がそうした齋藤の資質に惚れ込み、熱心に誘った選手だ。

 齋藤は宮城県加美町出身で東北楽天リトルシニアの出身。ここでも主将と正捕手を務めており、駒澤大の後輩である川岸強氏(現台湾・楽天モンキーズコーチ)が当時監督を務めていたこともあり、黒坂監督が視察に訪れると、齋藤の姿に心を奪われた。

「所作、振る舞いがすごくよかったんです。ノックを見ていても、的確な声がけ、目配り、気配りができる選手だと。こういう選手は、ぜひウチにきてほしいと思いました」

 学業も中学時代は「オール5」という優秀な成績だったためさまざまな選択肢があったが、黒坂監督の情熱やOBの吉野創士(現・楽天)がドラフト1位指名、さらに練習環境のよさに魅力を感じ、昌平を選んだ。

 昌平に入っても期待どおりの取り組みで、1年秋から正捕手に。黒坂監督は齋藤について、こう感心する。

「全体練習の時間内のパフォーマンスの発揮の仕方がすごいですね。余力を残さずやるので、自主練習もダラダラと長くやることもありません。

 一方で、下級生時代は優等生ゆえのリードに、シダックス時代に野村克也監督(当時)の薫陶を受けていた黒坂監督の目には物足りなく映った。

「セオリー的な配球ばかりで、挑戦や相手との騙し合いがまったくできていませんでした」

 だが、早くから相手の嫌がる配球を伝え続けてきた結果、「いつの間にか、相手と駆け引きができるようになりました」と、黒坂監督は成長に目を細める。

 昌平は、吉野が3年だった2021年夏に埼玉大会決勝、昨年秋の関東大会準々決勝と「あと1勝すれば甲子園」という舞台で二度負けており、齋藤も1年夏はベンチで、昨年秋はマスクを被ってその悔しさを味わった。

「あと一歩で甲子園という経験を何度かして、どうしたら勝てたのか、練習からどうすべきだったのかということが蓄積されています。それを生かして、チームを鼓舞するために視野を広く持って、グラウンドに立ちたいです」

 今年の昌平の武器は、切れ目のない打線と複数の好投手を有していることだ。それゆえ「3番・捕手」を務め、チームの精神的支柱でもある齋藤があらゆる面で相手からも恐れられる存在になれば、新たな歴史を刻む可能性は大いになる。

プロフィール

  • 高木 遊

    高木 遊 (たかぎ・ゆう)

    1988年生まれ、東京都出身。大学卒業後にライター活動を開始し、学童・中学・高校・大学・社会人・女子から世代別の侍ジャパン、侍ジャパントップチームまでプロアマ問わず幅広く野球を中心に取材。書籍『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方〜氷点下20℃の北の最果てから16人がNPBへ〜』(樋越勉著・日本文芸社)『レミたんのポジティブ思考"逃げられない"な"楽しめ"ばいい!』(土井レミイ杏利著・日本文芸社)『野球で人生は変えられる〜明秀日立・金沢成奉監督の指導論(金沢成奉著・日本文芸社)では、編集・構成を担当している。

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