青学大・常廣羽也斗は2023年ドラフト戦線のナンバーワン右腕か? 最速153キロの快速球、しなやかな投球フォームはまるで岸孝之 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 これは完全な筆者の主観なのだが、2023年のドラフトナンバーワン右腕は常廣なのではないか。とくに見てもらいたいのは、指にかかった時のストレートだ。低めのゾーンでもキャッチャーミットを押し上げるような、美しい球筋のストレートが投げられる。

 ただし、リーグ戦前にインタビューした際、常廣は気になる発言をしていた。

「ボールだけ見たら普通だと思いますよ。ピッチングフォームで間合いを変えて、ほかの人より空振りがとれているだけで。ボールの質がいいと言うより、よく見せているというのが正しいのかなと」

 この言葉を聞いて、納得はできなかった。本人がどう言おうと、明らかに異質なストレートを投げているように見えたからだ。

 助け舟を求めたわけではないが、青山学院大で投手陣を指導する中野真博コーチに常廣の球質について聞いてみた。笑顔の中野コーチからは、こんな答えが返ってきた。

「僕は指導者として東芝で9年、青学で4年やらせてもらっていますけど、真っすぐの質は今まで見てきたなかでナンバーワンだと思います。社会人の誰よりもすごいボールを投げていますから」

 やはり、目利きも常廣のストレートを認めているのだ。とはいえ、もう一度ボールを見て、その質を見極めたい。それは筆者にとってこの春で一番大きなテーマだった。

【病み上がりの登板で見せた非凡さ】

 発熱から9日後、日本大との2回戦で常廣は先発マウンドに上がった。

 立ち上がりから152キロをマークするなど、球速は出ているものの高めに抜けるボールが目立つ。1回には四球をきっかけに、犠牲フライで早くも先取点を許している。

 病み上がりの登板、東京六大学の試合開催や雨天順延もあって2日間のスライド登板、第1試合が乱打戦になったため1時間以上も遅れた試合開始時間。調整が難しい条件はいくつもあった。

 それでも、常廣はもうひとつの武器で窮地を乗り越えた。この日奪った8三振はすべてフォーク。試合後、常廣はこう語っている。

「バッターが真っすぐを張って(狙って)きているのはわかっていたので。フォークの落ちはよかったので、低めに集めていきました」

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