青学大・常廣羽也斗は2023年ドラフト戦線のナンバーワン右腕か? 最速153キロの快速球、しなやかな投球フォームはまるで岸孝之
4月19日の神宮球場バックネット裏には、スーツ姿のプロスカウトたちがズラリと並んでいた。この日開催された東都大学リーグは西舘勇陽(中央大)、武内夏暉(國學院大)、草加勝(亜細亜大)ら、どの試合にもドラフト候補が登場する垂涎のカードだったからだ。
ところが、ドラフト1位候補に挙がる常廣羽也斗(青山学院大)の姿がなかった。日大戦に登板しないどころか、ベンチにも入っていない。もしや故障でもしたのか? と憶測と動揺が広がるなか、同じく青山学院大のドラフト候補である下村海翔が7回1失点の好投でアピールに成功した。
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【イメージは大学時代の岸孝之】
試合後、報道陣に常廣の状態について聞かれた青山学院大の安藤寧則監督は苦笑交じりにこう打ち明けた。
「ケガではなく体調不良です。試合前日の朝に発熱しまして。インフルエンザやコロナのような感染症ではなく、今日もベンチに入れようかと思ったのですが休ませました」
一方、下村は常廣が発熱したと聞いて「ラッキー」と思ったという。
「このカードは(1回戦と2回戦の合間が空く変則日程のため)ずっと常廣が先発で、自分は先発できないかなと思っていたので。正直ラッキーでした」
下村はリーグ戦前から常廣の力量を認め、こんな心情を吐露していた。
「僕は常廣が一番いいピッチャーだと思っています。入学してから僕のほうが先に投げていましたけど、一緒にキャッチボールをしてみて『こいつの潜在能力はすごいな』と思っていました。今は常廣のほうが評価は上だし、尊敬していますけど、『負けたくない』という気持ちは常に持っています」
常廣はこれまでの野球人生で、全国大会を経験したことがない。どんな投手か知らない野球ファンも多いことだろう。
身長180センチ、体重73キロの細身な体格ながら、最速153キロの快速球とフォークを武器にする。バランスがよく、しなやかな投球フォーム。水色と白を基調にした青山学院大のユニホームを着ると、東北学院大時代の岸孝之(現・楽天)が重なって仕方がない。
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。