甲子園優勝にも「達成感はまったくない」。仙台育英・須江航監督が考える「高校野球における監督の役割」とは? (4ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文・撮影 text & photo by Kurita Shimei

――東北勢の悲願だった甲子園制覇を果たし、モチベーションや環境の面で変化は?

須江:「監督として達成感のようなものがあるかといえば、正直に言ってまったくないですよ。甲子園の優勝も私が何かしたわけではなく、プレーしたのは選手たち。いろんなものが噛み合った上での結果で、自主的なものではなく周りの力が大きかったので。今夏が自分の評価基準になることもなく、これからも何かに固執することはないんですよ。変化があったとすれば、来年以降に入る選手の競争力でしょうか。正直、入部希望者が多すぎて驚いていますね」

――監督として、今後の自身の役割や目標はどこに設定しているんでしょうか。

須江:「私が考える高校野球における監督の役割は"モチーベーター"なんです。私は投手が150kmを出すための魔法の技術指導ができるわけでもないし、ゼロからイチを生み出せる人間でもない。せいぜい0.1や0.2からスタートして、できないことがあったらそれを伸ばしていくために、いろんな分野のプロフェッショナルな方の知識や手法を参考にすればいいと考えています。

 ひとつこだわってきたことは、指導者であれ教員の立場であれ、プロフェッショナルでありたいということです。少し前に読んだ(フリーアナウンサーの)田中みな実さんのインタビューの中で、プロの定義を尋ねられた田中さんは『プロとは求められていることを安定して供給できる人』と話されていたんですが、まさにその通りだと思います。監督の私がやることは変わらず、15~18歳の生徒たちと活動をしていくこと。その中で絶対的にできることは、彼らのモチベーションを高めることなんです。

 それは平成から令和になろうが、いつの時代になろうが変わらない。その過程ではいろんなケースが想定され、監督は知識や情報収集をアップデートしていく必要があります。それが私の考えるプロフェッショナルのひとつの形であり、追い求めていきたい部分ですね」

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